「頑張っても評価されない……」と嘆くのは筋違い

 労働力は「商品」です。そのため、一般の商品と同じように、「価値」と「使用価値」があります。これまで説明してきた内容が、労働力の「価値」についてでした。

 では、「労働力の使用価値」とは一体何でしょう? 労働力の使用価値は、「労働力を使ったときのメリット」です。要するに、「会社が、ぼくら労働者を使ったとき(雇ったとき)のメリット」が労働力の使用価値なのです。

 そして、会社にとってのメリットとは、もちろんぼくらが稼ぐ利益です。つまり、

・使用価値が高い労働者は、能力が高く、会社に対して大きな利益をもたらす人
・使用価値が低い労働者は、能力が低く、成果を上げられない人です。

 逆に考えると、会社に利益をもたらす人(成果を上げる人)は、「使用価値が高い人」ということですね。

 ここで考えてください。使用価値は、その商品の値段に直接的な影響を及ぼしませんでした。使用価値が高いものは、需要と供給の法則にしたがって多少値段が上がります。

 しかし、2倍の使用価値があっても、値段は2倍にはなりません。上がるのはたとえば「1.2倍」くらいだったりするのです。労働力についても同じことが言えます。これを給料に置き換えると、「2倍の成果を出しても、給料は1.2倍くらいしか上がらない」となります。

 成果を上げたのに給料が上がらないと嘆く人は多いです。「うちの会社は社員を見ていない」「頑張っても評価されない」と。しかし、日本の資本主義経済のルールを考えれば、そう嘆くのは「筋違い」だったことがわかります。成果を上げたら給料が上がると感じるのは、そもそも誤解だったのです。

「そんなことはない、成果を上げなくていいはずがない!」そういう反論もあると思います。でも、ぼくは「成果を上げなくてもいい」と言っているのではありません。

 むしろ、「労働力」というものが「商品」になるためには、使用価値があることが絶対条件です。成果を上げられない労働者は、使用価値がないので、企業に雇ってもらえません。成果を出すことは不可欠です。

 使用価値が上がれば、「その商品がほしい!」と思う人が増えます。一般の商品で考えれば、使用価値があれば、消費者に選んでもらえます。そして、継続して買ってもらえます。

 これを労働力で考えると、「労働の使用価値があれば(その人が優秀で、企業に利益をもたらせば)、企業に選んでもらえる、継続して雇ってもらえる」となるのです。

 お気づきでしょうか? 労働者として優秀になり、企業に利益をもたらすことで得られるのは「雇い続けてもらえること」なのです。給料が上がることではありません。2倍の成果が出せるようになっても、給料は2倍にはなりません(先ほどの話の通り、1.2倍くらいにはなるかもしれませんが)。

 そういうものなのです。それが資本主義経済における給料のルールなのです。