ソニー、パナソニック、シャープの家電3社の2014年3月期決算では、パナソニックとシャープは事業構造改革の成果が出始め、浮上しつつある一方で、ソニーだけ今期(2015年3月期)も最終赤字予想となるなど、取り残されている(参考記事:こちら)。週刊ダイヤモンド2014年4月26日号第一特集「ソニー消滅!!」では、同編集部はソニーの現状に厳しい見方を示している。しかし、早稲田大学ビジネススクール准教授の長内厚氏と入山章栄氏は、経営学者の視点から今の“平井ソニー”を評価すると、まったく別のものになるという。両准教授に話を聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド 後藤直義、ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)
長内氏:「戦略に一貫性がある。
次期経営者の育成が唯一の課題」
早稲田大学ビジネススクール(WBS)准教授。1972年生まれ。東京都出身。京都大学大学院修了・博士(経済学)。1997年ソニー株式会社入社後、テレビ事業本部等で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生等を経て、07年より神戸大学経済経営研究所准教授。11年より現職。経営学の主要学会で役員や学会誌編集委員を務める傍ら、ソニーなど国内外家電メーカーのアドバイザー、ハウス食品中央研究所顧問などを務め、積極的に産学貢献活動も行っている。
(長内ゼミ紹介サイト: www.waseda.jp/sem-osanai/)
(長内研究室サイト: www.f.waseda.jp/osanaia/)
ソニーはリストラを続けているが、私のソニー時代の友人の中で、「もう、ソニーを辞めようと思っている」と言っていたエンジニアが、平井一夫CEO体制になってから、辞めるのを踏みとどまっているそうだ。それはなんでなんだ、と思って話を聞いてみると、「それ、面白いね。やってみようよ」と平井さんから言われたんだそうだ。
そのエンジニアは「トップに言われるのは久しぶりだ」と言っていた。井深さんや盛田さんの創業世代からのソニーの伝統でしたが、大賀さんなどは、フラッと現場にやってきて平社員に声をかけ、叱咤激励をしていた。事業部間の人事交流も進んだ。かつてのソニーのように、組織がフラットで、経営とエンジニアの距離が近いという状況に戻りつつあるようだ。ハワード時代より、明らかにソニー社内は変わってきているし、良い方向に進みつつあると見ている。
いちばん大切なのはどういう戦略をとるかということだ。その観点で平井さんのとってきた戦略を見てみると決して間違っていないし、方向性はあっていると感じる。