イラスト/びごーじょうじ
戦国時代から江戸時代にかけて最も長生きした人物といえば南光坊天海である。知名度はそれほどでもないようだが、徳川家康のブレーンとして江戸の都市計画から宗教政策に関与し、家康の死後も二代目将軍秀忠、三代目の家光と三代に仕えた。250年あまり続いた江戸幕府の礎を築いた僧侶だ。
天海は謎の多い人物で、生まれもはっきりしていない。それでも百歳以上の長命であったことはたしかなようだ。最も有力な説では天海は1536年に会津で生まれ、1643年に亡くなったとされる。享年108歳。平均寿命が30代という時代に、煩悩の数と同じ年だけ生きた。
そんな天海は長生きの心得を説いた2つの「歌」を残している。
「気は長く、務めはかたく、色薄く、食細くして、心広かれ」
現代語に直すと、短気にならずに、よく働き、女性はほどほどに、食べ過ぎないで、心を広く持ちなさい、という感じだろうか。
「長寿は粗食、正直、日湯、だらり、ときおり下風あそばされかし」
こちらは長生きをするにはまず粗食、正直、毎日、お風呂に入ること。そして、のんびりと生きて、時々はおならをしなさい、といったところ。
どちらの歌にも共通するのは食べ過ぎを戒めている点と、ストレスなく生きることを薦めていることだ。
天海の長生きの歌の教えは今でも十分にありがたいものだ。なかでも、粗食(食事制限)は最近、特に注目されるようになった。