これまで2回にわたり、確定拠出年金(以下、DC)についてお話ししてきました。まずDCのメリットやデメリットについて触れ、次に皆さんがDCをどのように活用しているのかを当社が実施したDC加入者のサーベイの結果から明らかにしてきました。今回はこれらを踏まえたうえで、DCでどのように運用すべきか、という少し実践的なお話をしたいと思います。

制度が運用に与える影響を考慮

 DCで運用をする際には留意しなければならない制度上の制約がいくつかありますが、最大の制約は原則として中途引き出しができないことではないでしょうか。加入期間にもよりますが、DCでは60歳までは引き出すことができず、病気などで急にお金が必要になったときでさえも引き出すことができないため、転職の際に受領できる確定給付年金(以下、DB)や一時金制度のほうが使いやすいと感じる人が多いと思います。でも人間は弱いもので、いつでも引き出せるとなると、ちょっとしたことで使ってしまうものです。貯金箱が満杯になる前に取り出した経験がある人は多いはず。したがって、自分年金を形成するという目的には、この制約はむしろありがたいものだと考えてください。しかも、この制約は強制的に長期運用ができるという点で運用にもポジティブな影響があります。例えば、50歳のオヤジの場合には10年以上の期間がありますから、相応のリスクをとった運用ができるようになります。このように、DCでは中途引き出しができないという制約を逆手にとって、長期の視点からリスクをとった資産配分を検討するべきだと私は考えます。

 制度面からの制約で運用に影響を与えるものがまだあります。それはDCでは資産の入れ替えに数日を要することです。通常、投資信託を入れ替える場合には、売却(および金額確定)に1営業日、購入に1営業日、計2営業日程度で完了させることができますが、DCの場合にはいったん現金化しなければならず、それに5営業日、購入に1~2営業日で合計6~7営業日もかかる場合があります。これでは日々のマーケットの動きを捉える機動的な運用ができるはずがありません。したがって、マーケットの動きを捉えるような運用を実施したいなら、DCではなく特定口座で実施するほうが適しており、DCでは長期的な資産配分を構築し、それをリバランスで維持していくような運用が適していると言えるでしょう。