ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

グーグルも欲しがった読者投票型ニュースポータル「ディグ」の衝撃

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第8回】 2008年8月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
2

 投稿者たちは、ニッチなニュースを見つけてくる情報力、その善し悪しを判断する見識眼、適切で気の利いたコメントをつけるセンスの良さなどを競っているわけで、これまではメジャー・ニュースを受け身に消化するしかなかった読者が、ディグによってニュースを“道具”に発言し、グループをつくり、他のユーザーに一目置かれるという存在になることができる。

 「投票で上位に躍り出たユーザーは、うっとりするような気分を味わう」のが、ディグの人気の裏にあるとエイデルソンは語っている。新聞の購読者やテレビの視聴者が激減する中で、人気急上昇中のディグをニュースへの新しい入り口と見る向きは多い。

グーグルは2億ドルで買収提案?
ヤフーは「buss.yahoo.com」で対抗

 実は、ディグにはひっきりなしに買収の噂が持ち上がっている。

 ヤフー、マイクロソフト、既存のメディア大手などとの交渉が行われているという噂がこれまでもあったが、7月にはグーグルが2億ドル相当の買収提案をしたと報じられた。グーグルの目的は、グーグル・ニュースを充実させるためのディグのアルゴリズムともユーザー数ともされたが、結局デュー・デリジェンス段階にまで入って交渉は棚上げになったと伝えられている。

 もちろん、ディグとて無敵ではない。

 同様のソーシャル・ニュースサイトには、トピックス・ドット・ネットニュースバインなど数多の新興企業が存在する他、今年2月にはヤフーがヤフー・バズをスタートさせ、トラフィック数でディグと拮抗している。

 さらに、ディグへの批判も多い。投票で上位にランクされるよう操作するユーザーが後を絶たず、さらに一部の投稿者がサイトを牛耳っているという噂もある。何よりも、ニュースの善し悪しを人気だけで測るのは、いかがなものかという疑問も湧く。

 昨年5月には、ブルーレイ・ディスクとHD DVDのDRM(デジタル権利管理)の暗号コードが投稿されたのをディグ側が外したと、ユーザーの大批判が起こった。ディグは今後こうした取り下げを行わないと宣言している。

 注目ニュースが一目瞭然に分かり、ウィキペディアのような民主性を持ち、SNS(ソーシャル・ネットワーキングサイト)のようなコミュニティーも有し、それでいてゲームのような競争があるという新しいメディアの形態は、まだその将来性も得体も知れないというのが正直なところだろう。だが、ディグの今後の動きによっては、新聞やテレビなどのメディア・サイトだけでなく、あらゆるSNS的なサイトが変化を迫られることになるのは間違いない。

previous page
2
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

ビジネスモデルの破壊者たち

シュンペーターの創造的破壊を地で行く世界の革新企業の最新動向と未来戦略を、シリコンバレー在住のジャーナリストがつぶさに分析します。

「ビジネスモデルの破壊者たち」

⇒バックナンバー一覧