先日、池袋の中華料理店で、山と積みあがった中国語のフリーペーパー(新聞)の一部を持ち帰った。「日本新華僑報」「東方時報」「陽光導報」などがそれ。まだまだ、相当の種類がある。紙面を開けば、独自のビジネスを展開する華人コミュニティが浮かび上がる。しかも、目からウロコの「激安情報」が満載だ。
最近でこそ中国人富裕層も増えたが、東京の片隅では、母国への仕送りのためにせっせと稼ぐ労働者層や、生活と闘う留学生もいまだ分厚く存在する。日本でも「究極の生活物価の安さ」がワイドショーネタになったりするが、上には上(下には下?)があるもので、彼らの生活も“究極の安さ”に支えられていることがわかる。
中国人たちが生活する
月額2万5000円の「寮」とは
まずは家賃の高いこの東京で彼らがどう生き延びているのか。その答えは「寮」にあることがわかった。
華人新聞には怪しげな広告に混じって、「入寮者募集」「豪華女子寮」など賃貸情報が掲載されている。寮とは何なのか。マンションやアパートとはどう違うのか。名刺大の広告には、物件を特定する住所も会社名もない。連絡先は携帯電話のみだ。「御徒町から徒歩5分、月(月額家賃)2.5万円」とはどんな物件かと早速電話をしてみると、案の定、無愛想な声が出てきた(想定の枠内)。面倒臭そうな応対。これでは客はどっちかわからない。なぜか相手のご機嫌をとる側となり、ようやく物件見学にこぎつけた。
なんとその部屋は商業ビルの中にあった。貸主は20年近く日本に住むという中国人。1階は店舗、2、3階を各フロア女子と男子に分け、貸し出している。2段ベッド2つとシングルベッド1つ。5人で8畳間を共有。貸しているのは、人間1人が寝られる実質1畳程度のベッド(布団は持参)だった。中国の工場従業員が寝泊りする寮、あの雰囲気とまったく同じだ。
「うちは毎日掃除してきれいにしてるから。他を見てご覧よ。汚いよ、ホントに」と管理人。
中にはゴミ貯めと化した寮もあるようだ。
月額賃料に3000円の光熱費が加算。あとは入居時に1万円を払う(退去時には返還されない)というそれきりの清算。保証人を立てる必要はない。また、仲介会社も入らず、貸主との直接契約だ。1Kで月8万円前後という同地の相場からするとかなり安いし、月額換算すれば1泊3000円程度のカプセルホテルよりも安い。こうした中国人を相手にした「間貸し」のようなビジネスは、山手線沿線のみならず、中央線、東西線などの沿線に無数に広がっている。