「T-Connect」のウリは対話側の音声認識
ただし、それだけでは他社との差別化は難しい

「T-Connect」の記者会見は1時間以上に及んだが、そのなかで最も時間を要したのが、音声認識のデモンストレーションだ。開発を担当した、トヨタ・e-TOYOTA部・テレマティクス事業室の八代愛氏が車載器との対話型コミュニケーションを実演した。

 この音声認識技術のベースは、米ニュアンス社によるもの。同社は車載器向け音声認識で世界市場シェアがほぼ100%だ。

「T-Connect」の開発を担当した、トヨタ e-TOYOTA部テレマティクス事業室・主幹、筧享氏 Photo by Kenji Momota

 だが、日本語の認識精度は英語に比べてやや劣るため、「トヨタ独自で開発した部分が多い」(e-TOYOTA部・テレマティクス事業室・主幹・筧享氏)という。

 これは筆者の過去の取材経験からの推測だが、このトヨタ独自開発には、アドバンスドメディアが関与した可能性があると思う。同社はauの「おはなしアシスタント」の他、大手通信インフラ向けの音声認識技術を提供している。日本語の音声認識技術開発の分野で、同社の存在は大きい。車載器に関してニュアンスをベースにブラッシュアップができる企業は、日本国内では極めて少ない。

 こうして高精度化された、自動車メーカーとして世界初となる車載器による対話側の音声認識。だが、アフター系のカーナビでも日本国内向けの量産品が登場している。

 なかでも、クラリオンが2013年10月のIT・電機製品の大型見本市「CEATEC」(於:幕張メッセ)で発表した「NX714」は、グーグルのクラウド型音声認識技術「グーグルボイス」を活用した「インテリジェントボイス」機能を搭載。日本人の「下手な英語」でもクラウド側の学習効果により認識率が高い等、カーナビの検索精度はかなり高い。

 クラリオンはグーグルとの個別の高額契約によりこの技術を確保した。「(テレマティクス関連の)競争環境は極めて厳しい。いま投資しなければ、車載器ティア1の事業の将来性はさらに厳しくなる」(同社幹部)と、背水の陣で臨んでいる。

「T-Connect」がこうした既存商品に対して、音声認識の精度で優位性を持つことは難しい。「T-Connect」では、コールセンターへの多額投資が必要な有人オペレーターサービスや、現状では自動車メーカーでしかできない自社製品のCANによる先読み情報サービスなどが、他社製品との差別化要因となる。