配偶者控除の見直しに関しては、単に税制だけではなくて、子育てや夫婦の働き方、それぞれのキャリア観、企業側の女性の登用や子育てをしながら働く社員に対するサポートのあり方など、さまざまな視点での議論が必要だ。そこで、女性の活躍推進についてさまざまな調査の経験があるリクルートワークス研究所主任研究員の石原直子氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)
税の公平性から考えて
現状の制度はおかしい
――配偶者控除見直しの議論が年末に向けて進みます。「女性の活躍推進」が目的としていますが、議論をどのように見ていますか。
リクルートワークス研究所 主任研究員。都市銀行、人事コンサルティングファームを経て2001年よりリクルートワークス研究所に入所。一貫して人材マネジメント領域の研究に従事する。近年はタレントマネジメントの視点から、次世代リーダー、女性リーダー、事業創造人材等の研究を進めている。リクルートワークス研究所の「提言 女性リーダーをめぐる日本企業の宿題」作成にあたってプロジェクトリーダーを務めた。
Photo:DOL
基本的に配偶者控除の見直しには賛成です。パートタイム、フルタイム、フルタイムでもどのくらいのレベル・収入を目指して働くのかといういろいろな選択肢があるなかで、「ある一定レベル以下の働き方をすると得ですよ」というメッセージは、やはり税の公平性などの観点から考えると変だと思います。現状を公平性の高い方向へ変更していくのは、まっとうなことではないでしょうか。政府が言う「『二重の控除』をとる」ということで良いと思います。
現状は「専業主婦でいたほうが得」と思えるような制度になっています。将来的に労働力が不足していくことが分かっている状況で、働かない方がいいという、働く意欲に対してネガティブに働いているのは、発展的ではないですよね。
――見直しで課税最低限が下がるため、低所得者を苦しめることになるという指摘があります。
もちろん、フルタイムやパートタイムでたくさん働けず、その結果収入が少ない人はいると思いますし、それなりの理由があると思います。体の具合が悪いとか、親の介護をしなければならないとか、人それぞれだと思います。
そういう収入を増やしたくても増やせない人が、配偶者控除の見直しによって控除がなくなり、さらに手取りが減るということなのであれば、給付などの他の制度を考えるべきではないでしょうか。