「よい商品だと思うんですが、なかなか売れないんです」「これは絶対の自信作だったのですが、さっぱり売れませんでした。どうしてでしょうか」

 商品開発の担当者から、こんな相談を受けることが多くなっています。

 ところが、この「よい商品」というのがクセモノなのです。

 よく聞いてみると、誰にとって、どういう点で「よい商品」なのかが結構あいまいで、商品開発した担当者が、勝手に「よい商品」だと思いこんでいる場合が多いようです。

 その一方で、確かに商品の品質やデザインは素晴らしいのですが、他のいろいろな理由で思うように売れない場合もあります。こうした商品の場合、商品そのものより、商品の売り方、つまり「商品営業」の方法に何らかの課題があり、壁に突き当たっているのです。

 シニア市場を対象としたビジネスでよく見られるのは、次の3つです。

 (1)顧客が利用しないメディアに商品情報を告知してしまう
 (2)顧客が気づきにくい流通チャネルに商品を流してしまう
 (3)顧客の琴線に触れない商品イメージを告知してしまう

 こうした問題の根本原因は、商品・サービスの「提供者」と「利用者=顧客」とのやり取りにおけるミスマッチです。正確にいうと、当該商品・サービスに関する提供者と利用者との「メディア」「流通チャネル」「商品イメージ」のミスマッチの総和なのです。

 したがって、このようなミスマッチを何らかの方法で低減することで、このミスマッチに起因する商品営業の壁を越えることが可能となります。
次に、そうした方法をすでに団塊・シニア市場において実践している例を紹介しましょう。

 スヴェンソンというドイツのかつら会社があります。日本国内での売上げは、2005年3月現在で39億円。しかし、使用継続率が97.5%ときわめて高く、かつらを利用する人の間で評判が高いようです。顧客年齢層は、男女とも20代から80代まで、男性が顧客の約八割を占めます。

 スヴェンソンのかつらが優れている点は3つあります。

 第一に、商品品質がよく、利用者の細かいニーズに応えた内容になっていること。編み込み式増毛法という独自の技術で、1ヵ月間24時間常用できます。軽く、自然で、かつらをつけているという感じがしない、というのが利用者の意見です。また、通気性がよく、地毛の場合と同じ感覚に近いといいます。