中国や韓国にとって、日本が強い関係を持つ米国の存在があるがゆえに、日本に遠慮をしてきたという側面も、もはや存在しないのだろう。それぞれが日本との関係にかかわらず、米国に影響力を行使し得るという自信が強くなっているということだろう。小泉元首相は、「米国との関係を良くすれば自ずとアジア諸国との関係は良くなる」と語っていたが、その時代は終わったと言うことか。

日中韓各国でのナショナリズムの高揚
歴史問題に焦点が当たる国内情勢

 第三に、歴史問題の位置づけが、日中韓各々の国内で変わってきたことである。もともと日本との歴史にかかわる問題は、中国、韓国にとって極めて微妙な政治問題であったが、今日ナショナリズムの高揚と共に、一層強硬な姿勢をとるに至っている。

 中国共産党にとっては、その統治の正統性は抗日戦争の勝利にあり、1989年の天安門事件後の国内政治の立て直しにおいても、反日教育が利用された。今日、中国の大国意識を駆り立てていく上で、日本との歴史問題には焦点が当たりがちとなる。

 習近平政権は「中国の夢」を掲げ、米国との「新型の大国関係」を追求しているが、歴史問題で国際社会の日本への同情はなく、中国の正当性をアピールする格好の口実となる。

 安倍首相は政権発足当初、「侵略」の定義などへの疑義や村山談話に対する違和感を表明し、また「戦後レジームからの脱却」を標榜していた。中国や韓国との関係で、もうあまり遠慮は要らないという国内的雰囲気も強くなった。

 中国はこうしたことを、日中関係の基盤を損ねることと捉える。中国の論理からすれば、戦争責任はA級戦犯に帰着し、国民に罪はないとして日中関係は正常化されたのに、日本国総理がA級戦犯も合祀されている靖国神社を参拝するのは、認めらないと主張する。