ジャック・
サントス
ガートナー リサーチ部門バイス・プレジデント

 デジタルビジネスについて、ワールドカップから得た5つの知見を紹介しよう。

(1)時間は相対的でタイムシフト可能

 視聴時間:何とも不思議だったのは、デジタル録画やストリーミング技術をもってしても、リアルタイムで観戦している仲間からあっさりと話題に乗り遅れていることだ。しばらくは気づかなかったが、試合結果について他の人たちとチャット上で話し合っていると、リアルタイムより30秒~1分ほど後れを取っているのが分かった。最近はそのような現象が頻繁に起こるため、誤解が生じやすくなっている(モスクワとワシントン間のホットラインは、いまだにアナログなのだろうか?)。

 コメント時間:Facebookに“リアルタイム”でコメントをアップしたとしても、それを見る人たちは、コメントのアップ時刻まで気に留めない。なおかつ、コメントが表示された時間(Facebookの使用経験から我々も承知していることだが、投稿時間の操作は簡単だ)を基準にしてコメントを読むだろう。周囲にどう伝わるかによって、タイムラインの並べ替えには苦労させられそうだ。私がしばしば使う言い回しだが、「自分がメッセージを送ったからといって、必ずしも実際に届いたとは限らない」のだから。

(2)国籍という概念は絶え間なく変わる

 二重国籍の身としては、国民国家というコンセプトがとても古くさいものに思えてきた。アメリカで生まれた私の子どもたちは、(制限がないと想定して)4つの国籍を持つ資格がある。そのことは、ワールドカップでは実にいいことだ。私は2つのチームを応援している(残念ながら両チームとも1次リーグで敗退してしまった)。では、その2チームが対戦することになったら? これは難しい選択である。なぜなら、ゴールのたびに応援チームが変わるからだ。日和見主義だと言われても構わない。私はどちらのチームが勝っても祝杯を挙げるのだ。

(3)デジタルの国境は透過性あり

 アメリカ国内でのワールドカップの視聴方法は、ESPN(ケーブル加入者用)とスペイン語放送のユニビジョンの2つだけだった。私はスペイン語放送で観戦したが、現在はVPNのオプションが豊富で第三国のローカルテレビ番組を視聴できる(私の場合はHolaを使用)。きわめて優れた視聴環境で、(Apple TVやChromecastなどにより)簡単に55インチの大画面で見ることができる。インターネットの検閲や知的所有権の規制も何のそのだ!