開催国ブラジルを撃破し、決勝戦ではアルゼンチンにも競り勝って、24年ぶり4度目のワールドカップ優勝を成し遂げたサッカーのドイツ代表。
この栄光を手に入れるための戦いは、8年前の2006年から始まっていた。
2006年W杯の開催国だったドイツは、直前の予想よりは善戦したとはいえ、地元で優勝を遂げることはできず3位に終わった。大会後に代表監督に就任したヨアヒム・レーヴ氏に、代表チームの再強化が託された。
レーヴ監督は、就任直後に「選手がボールを保持している時間を最小化する」という極めてシンプルな目標を掲げた。つまり、試合中にマイボールになったらできるだけ早く味方選手にパスして、網の目を縫うようにボールを動かしながらチャンスを作っていくパスサッカーだ。サッカーの専門用語では「ポゼッション・サッカー」とも言うらしい。
この方針に沿って、徹底したプレーの分析が行われた。データ収集、分析で強力なパートナーとなったのが、ドイツを代表するIT企業SAPである。
SAPは、古くからスポーツの情報分析や、球団運営のIT化による経営強化に専門チームを作って取り組んできた。ドイツサッカー連盟(DFB)との関係も深い。サッカークラブではホッフェンハイムというチームと長く協力関係にあり、同クラブはハイテクを駆使したデータ分析による選手育成に最も力を入れている球団として知られている。
ボール保持時間は
3分の1に短縮
レーヴ監督の方針をうけ、SAPではすぐにドイツ代表チームの試合を分析、ボール保持時間のデータを提供した。すると、2006年当時は平均すると1人の選手が約2.8秒ボールを保持していたことがわかった。
この数値を極力減らすためのトレーニング、選手同士の連携を進めた結果、効果はすぐに表れる。2008年には約1.8秒、2010年の南アフリカ大会の時は約1.1秒まで短縮、そして今大会前には1秒を切るまでになった。