紙おむつに使われる高吸水性樹脂(SAP)で世界シェアナンバーワンの日本触媒は5月、2020年度に向けた長期目標を打ち出した。売上高5000億円、経常利益500億円を達成するために、どんな取り組みをするのか。米国でシェール革命が起こり、世界の化学産業が転換期を迎えるなか、国内の中堅化学会社の生き残る道を聞いた。

日本触媒社長 池田全德 <br />世界首位の紙おむつ材料一本足を脱したいいけだ・まさのり/1953年1月22日生まれ、大阪府出身。75年東京大学工学部卒業、76年日本触媒化学工業(現日本触媒)入社。83年コーネル大学経営学修士課程修了。98年海外事業部長、2003年取締役などを経て11年4月から現職。
Photo by Toshiaki Usami

――会社規模は中堅ですが、高吸水性樹脂(SAP)で世界シェア25%超を持ち、利益率も高い。今後もSAPに特化して成長していくつもりですか。

 世界シェアの高い製品に特化した中堅化学会社という意味で、JSRやクラレと比べられますが、うちはやっぱりまだダメですね。たまたまSAPが需要拡大の波に乗り、SAPの原料であるアクリル酸の自社技術を持っていた。今のところそれだけ。収益がSAP一本足になっている。(JSRやクラレのように)世界1の製品をもっと増やさないと。もちろん、SAPの地位を死守するためにヒト、モノ、カネのリソースを投入していきますが、本当はそれ以外にも、もっといろんな事業をしていくべきなんです。

 同じ化学や素材を扱う中堅企業でもコンシューマ向けビジネスをやっているところもある(カネカの食品やクレハの「クレラップ」など)。うちにはまだそこまでの能力がありません。それに、うちはやっぱり素材で勝負していきたい。「革新的な技術で新しい価値を提供する化学会社」としてコーポレートアイデンティティを定義しています。

 それとね、中堅とおっしゃいますけど、化学会社ってなかなか大きくなりにくい。だから三菱ケミカルホールディングスのように、M&Aをしていかないと大きくならないんです。