愛煙家の皆さま、たばこの吸い方一つで肺がんの発症リスクが大きく変わるようです。愛知県がんセンター研究所の福本紘一氏らの研究報告から。
福本氏らは、生検で新たに肺がんと診断された患者群653人と、ほかの病気で通院中の453人、地域住民828人を対象に、たばこの吸い方と肺がんの発症について比較検討した。たばこの吸い方の影響を純粋に調べるため、年齢や性別、飲酒、果物や野菜の摂取量など肺がん発症に関連する因子は排除している。
その結果、非喫煙者と比較した場合、「煙をふかす」タイプの喫煙経験者は肺がん発症リスクが1.72倍に、「煙を吸い込む」タイプの喫煙経験者では3.28倍に上昇することが示されたのだ。また、喫煙経験者に限定すると、「煙を吸い込む」群は「ふかす」群に比べ発症リスクが1.52倍と明らかに高かったのである。米国たばこメーカーのパッケージに記載されている「あなたが吸い込む(発がん物質の)タールとニコチンの量は、たばこの吸い方によって異なります」という警告文は、ダテではないのだ。
事実、各銘柄に記載されているタールやニコチンの量は、フィルターのごく先っぽに火を点け「機械に吸わせて」測定した数値。実際より大量の空気が流入し、フィルターに無数に開いている「換気孔」から有害物質が逃げていく。しかし、人が喫煙する際は、指や唇で換気孔が塞がれる。当然、測定値を上回るタールやニコチンが吸入されるわけだ。しかも、「ライト」や「マイルド」銘柄の場合、無意識に「軽い」分を補償しようと肺一杯に煙を吸い込んだり、指がやけどする寸前まで吸い尽くそうとするので、逆に暴露量が増えると指摘する声もある。「ライト」がより安全、という誤解は致命的になりかねない。
肺一杯に煙を吸い込まないと気が済まない方はニコチン依存症もしくは予備軍であり、同時に肺がん予備軍でもある。たばこ税で取られた分を肺がん治療の医療保険で取り返す、なんてシャレにもならない。禁煙が難しい場合は、まず吸い方を見直しましょう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)