大量飲酒に喫煙が重なると認知機能の低下が大幅に加速するようだ。英国の公務員を対象にしたホワイトホール2(WH2)研究の報告から。
追跡対象は年齢45~69歳(平均年齢55.6歳)の男女6473人(男性4635人、女性1838人)。たばこやアルコールの消費量について質問し、追跡期間中の10年間に認知機能テストを3回行った。
その結果、たばこを吸い、かつ大酒を飲む人は、非喫煙者で適度にお酒をたしなむ人より、36%も認知機能の低下速度が速かった。研究者によれば「同じ10年の間に、2歳余計に年をとったのと同様の影響が生じる計算になる」。20歳でたばこと酒を覚えたと仮定して、飲み方次第では実年齢60歳にして70代の認知機能の維持も怪しいことになる。このほか同じ喫煙者でも、飲酒量に比例して認知機能の低下が加速することも明らかになった。
今回の調査で大量飲酒とされたのは、純アルコール換算で週に168グラム以上・21単位の飲酒量があるケース(男性の場合)。「単位」とは英国民保健サービス(NHS)が適量飲酒の啓発に使っている表記で、1単位が純アルコール換算8グラムに相当する。アルコール度数5%のビール1パイント(568ミリリットル)は3単位、アルコール度数12%のワインなら小さいグラス(125ミリリットル)に1杯で1.5単位に当たる。NHSが提唱する上限飲酒量は男性で1日3~4単位、女性で2~3単位まで。結構、厳しい基準である。
ちなみに、喫煙単独と認知機能の低下との関連では、昨年6月に同じWH2研究から報告があった。それによると、喫煙単独では非喫煙者と比較して認知機能の低下速度が1.2~1.5倍加速される。今回の報告でも「中年期には、禁煙や節煙を実施するか、深酒を避けるかして、二つの不健康な行動が重ならないよう心がけるべき」としている。
若いころならいざ知らず、中年ともなればたばこや酒に頼らずともストレス解消は可能だ。初老期の認知機能低下を遅らせるためにも「適煙・適飲」を心がけよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)