靖国や対中政策に見る米国からの注文
日本外交の基本となる日米関係への懸念
日本の対外関係の中で、将来に向けて最も懸念すべきは、実は対米関係ではないかという危惧を持つ。困難な状況にある対中、対韓関係ではなく、対米関係を最も懸念するというのは、奇異に響くかもしれない。
尖閣諸島問題で象徴的に見られるように、尖閣が安保条約の対象であるとして米国がその防衛義務を明確にしたことが、中国との関係で日本の大きな助けとなったことに如実に示される通り、日米関係が強固であることは日本外交の基本である。
ところが、たとえば昨年12月に安倍首相が靖国神社参拝をした後、米国政府は間髪を入れずに「失望した」という声明を出したが、公に同盟国の首相を批判するのは異例であった。
また、尖閣諸島の問題では、日米安保条約の対象であることを明確にしつつも、米国は現在の日本の対中政策を明確に支持するわけではなく、中国を過度に刺激すべきではない旨を、様々な場面で指摘してきている。米国のメディア、特にニューヨークタイムズのようなリベラル紙は、その社説で繰り返し日本を批判的に論説してきている。
日本は米国が民主党政権より共和党政権である方が、日米関係にとって好ましいと考えているという議論や、リベラルなオバマ民主党政権と保守的な安倍政権とは相容れない面が多いという議論があるが、このような議論が的確だとは思えない。
何故ならば、クリントン民主党政権期の1996年、97年にかけて米軍普天間基地の返還や日米安保共同宣言、日米防衛協力のガイドライン策定といった、日本の安全保障にとって極めて重要な課題について大きな前進が図られたように、歴代の米国民主党政権と日本の自民党政権は、順調に日米関係をマネージしてきた。