鳩山由紀夫政権は、間違いなく“小沢肩車政権”となる。小沢一郎氏が鳩山氏を肩車しているような政権だ。
これを悪いと言っているのではない。うまくいけば、鳩山氏は祖父(鳩山一郎元首相)を上回る業績を上げることができるし、小沢氏も尊敬している大久保利通を越える大政治家になる可能性もある。
いつの間にか「小沢氏一人天下」
になってしまった民主党
その小沢氏が民主党の幹事長に就任することになった。注意すべきは、与党の幹事長と野党の幹事長はかなり違うこと。与党の幹事長は、党首が首相となって党を離れているから、党の全権を担うことになる。
小沢氏はこれから幹事長として、選挙(公認決定)、政治資金、国会運営を担当する。
また、鳩山氏から「党の人事を任せる」と言われたというから、党内すべての人事権も握ることになった。政府の人事には無関係のようだがそうではない。党と政府の人事の調整を通じて、政府へ送り込む人事にも大きな影響力を持つだろう。
小沢氏が、代表代行を兼ねることも考えられる。代表代行や副代表は形式的には幹事長より格上だから小沢氏の党運営に何かと気がかりな存在になるからだ。
また、「政権交代したから事情が違う」として、代表代行や副代表を全面的に整理する可能性もある。政府に入る代表代行(菅直人氏)だけ辞めさせ、腹心の興石代表代行だけを残すかも知れない。
かくして、150人とも言われる強固な小沢派を中核にして民主党の小沢体制が確立される。その小沢氏に肩車されるのが「鳩山首相」と言うことになる。
私は戦後政治史の中で、これほど強固な政治勢力を率いる政治家を知らない。佐藤栄作元首相や田中角栄元首相も党内に強力な政治基盤を築いたが、それぞれ池田勇人元首相や福田赳夫元首相のような肩を並べるライバルがいた。それに比べて、これからの民主党は小沢氏の一人天下のようなもの。反小沢、非小沢の姿勢を見せていた人たちまでいつの間にか白旗を上げてしまった。
「鳩山首相」に求められるのは
公然とした意思表明
では肩車された「鳩山首相」は、どのように行動すべきだろうか。私は、公然と行き先を指示したほうがよい、と考えている。それを小沢氏が最大限尊重して足を進めれば、小沢支配はマイナスどころか大きな成果を生むに違いない。
ところが、鳩山氏の指示があいまいであれば、小沢氏は自分の進みたい方向に突っ走るだろう。
「鳩山首相」が「小沢幹事長」をコントロールできないわけではない。彼が常に世論と結託して進む方向を決めれば、肩車している小沢氏も同調してくれるだろう。だから、「どこへ行きたいか」、「何をしたいか」を小沢氏だけでなく、世論にも届くほど大声で明確に叫ぶことが大切だ。そうすることによって、「鳩山首相」は小沢支配を有効に活用することができるのではないだろうか。