弁護士界にとって、民主党圧勝で大量の新人議員が輩出されたのは、まさに渡りに船だった。

 9月16日、日本弁護士連合会が開催した政策担当秘書説明会に、司法修習を終え、職を探す新人弁護士など177人が押し寄せた。日弁連が予想した100人前後をはるかに上回る大盛況だった。

 背景には新人弁護士の就職難がある。通常、司法修習が終わると“イソ弁”(先輩弁護士の事務所に就職する弁護士)としてキャリアをスタートさせるのが一般的だが、「今年は修習生全体の10%くらいはイソ弁先が決まらない。昨年は2%くらいだった」と1年目の弁護士は語る。司法制度改革で司法試験合格者が大幅に増え、新人弁護士の就職環境は厳しいのだ。

 景気悪化でM&Aや不動産証券化ビジネスなどが激減し、弁護士需要が冷え込んだため、大手法律事務所は新人弁護士の採用を絞っている。司法修習修了後、すぐに独立開業する道もあるが、経験やツテがなければ事件を受任していくのは難しい。仕方なく、“ノキ弁”(先輩弁護士の事務所に間借りするが仕事の保証はない)としてキャリアをスタートさせる新人もおり、年収が300万円に満たないという話も珍しくない。

 そうした状況下で政策秘書として政治の世界で活躍する話は魅力的に映るのだろう。司法試験合格者や国家公務員一種試験合格者は、政策秘書試験を受けなくてもよい。初年度の年収は700万円を超え、「弁護士の1年目の年収としてはよいほう」(弁護士)だ。それに「法律しか知らない世間知らずの弁護士ではなく、政界も知っているということは、後のキャリアで生きてくるはず」(同)と、キャリアパスとして有効だという声もある。

 一方で、「日弁連は政治的発言力の強化を狙っている」(弁護士)という見方もある。業域拡大で政界へ弁護士を送り込み、より深く立法にかかわればプレゼンスも高まる。弁護士界は、真っ先に政権交代を“活用”している。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

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