自民党の退潮が著しい。
確かに総選挙では惨敗を喫した。だが、党自体が解党したわけでも、消滅したわけでもない。にもかかわらず、党所属の議員には、すべてが終わったかのような絶望感が漂っている。
その理由は、特別国会での首相指名選挙で白紙投票を呼びかける声が広がったからだ。自民党は、麻生総裁ではなく、何も書かずに投票しようとしていたのである。
もはやそこには政権与党であった矜持など存在しない。総選挙での敗北の総括を回避し、党再生の第一歩である、自らの党の顔を選ぶ権利すら放棄したのである。本当にそれで再生を望んでいたのだろうか。
投票日前、麻生首相は「負けっぷりのよさも大切だ」と話していた。だが、結局は都合の悪いことには目を瞑っていた。
「白票で臨むのは、衆議院議員として、国民のみなさまに対する大事な仕事を放棄しているということになります」
石破茂氏は繰り返しこう述べて、白紙投票に反対していた。だが党執行部は白紙投票で調整に入っていたのである。
今回の総選挙で筆者は全国を行脚して回った。選挙後も各都道府県の選対幹部とは連絡を取り合っている。自民党福岡県連の幹部のひとりに聞いた。
「麻生総理は、誰でもいいから次の代表を決めてから辞めんとなぁ。そうでないと地方がもたんよ。選挙で負けるのは仕方ないにしても、新しい人を選ばんと組織に説明がつかんよ」
選挙中、自民党は、野党の民主党に対して批判を続けてきた。もちろん、当の麻生首相も遊説の中で繰り返しこう語ってきた。
「いいですか、みなさん。聞こえがよくても、できもしないことを言うのは明らかに間違いなんです。民主党っちゅう政党は、もう、本当にめちゃくちゃなことを言っている。この前も、日の丸を破ってめちゃくちゃにしてしまった。国旗を粗末に扱う政党に国を任せられますか。彼らに日本を守れますか。政治が国家を守るのは当たり前のこと。日本、そしてみなさんの生活を守るのは自民党、政権を担ってきた実績をもう一度考えてください」