海外で成功するカギは“下ネタ”にある

松嶋 僕は一時、『シモネーター』という“下ネタ”ガイドブックを出そうかと考えていたんですよ。現地に溶け込むための最大の方法は下ネタしかない、と思って(笑)。海外で活躍しているスポーツ選手を何人も見てきましたが、成功した人たちは全員下ネタを言いますよね。今で言うと、長友選手ですね。

 それは現地に溶け込むための技術だと思います。僕もフランス語でくだらない俗語を覚えました。それをキッチンでたまに言っていたら、こいつはおもしろい日本人だと思われて輪の中に入ることができて、それからいろいろ教えてもらえたという経験があります。

 日本には「郷に入れば郷に従え」という言葉があるのに、全く郷に従わないんですよ。「日本人はこうだから」とか言っちゃう。うちのスタッフを見ていてもそうなんですよ。「なんでお前はわかり合おうとしないんだ!」と怒ります。まずは心を開いてよ、というのが下手ですよね、それは島国根性なのかなと思ってしまいます。

海外で成功したければ“下ネタ”を覚えなさい <br />日本人を捨てず現地に溶け込む秘訣やながわ・のりゆき
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。1993年、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士号取得。慶應義塾大学経済学部専任講師、東京大学大学院経済学研究科助教授、准教授を経て、2011年より現職。研究分野は金融契約、法と経済学。主な著書に『日本成長戦略 40歳定年制』、『法と企業行動の経済分析』、『元気と勇気が湧いてくる経済の考え方』などがある。

柳川 まずは心を開いて、ということが日本人は苦手ですよね。そのきっかけとして下ネタはいいですね。

松嶋 ビジネスマンに送る下ネタブック、をつくりたいと思っているんです。いろいろな出版社に提案したら、「うちではちょっと……」と断られました(笑)。

柳川 それ、僕が監修します(笑)。

松嶋 みんな英語は話せるけど、輪に入れてない。現地の輪に入っていくときには、きれいな言葉だけではなくてボキャブラリーを持ったほうがいい。

柳川 どうすれば輪に入れるのか、わかっていないと思うんですよね。

松嶋 それから、輪に入る必要はないとも思っている。この間、フランス人スタッフが「日本語を勉強しているんです」と本を持ってきたんですよ。それを見たら「今晩、やらせてください」と書いてありました(笑)。そういうことばっかり書いてあって、「おまえ、なにを勉強してるんだよ」って笑いました。

柳川 六本木でナンパをする方法の各国版もあるみたいですね(笑)。

松嶋 別に僕は下ネタを広めたいわけではなくて(笑)、日本企業がグローバル化を進めるなかでは、輪のなかに入ること、そのために現地化していくこと、現地の人たちの感情を理解することもすごく大事だと思っています。

 僕は1998年にフランスに行きましたが、フランスに修業に行く前に、2人のフランス人のことをすごいと思っていました。僕がフランスに行く少し前の1996年、カルロス・ゴーンとフィリップ・トルシエが日本に来ていたんです。当時は渋谷で働いていたので、カルロス・ゴーンの『ルネッサンス』を読んでいました。当時、20歳くらいです。

 その本のなかに、相手の国の文化と宗教をわかることが一番大事だということが書いてあったのを読んで、この人すごいと思いました。そこに住む人たちがどうやって育ってきて、その土地がどういう土地かを理解する大切さを知るきっかけをくれたのは、ゴーンさんの本なんですね。

 ゴーンさんは僕の店に来てくれたことがあるんですよ。彼にどうしても会いたいと思って、知り合いにお願いしたら連れて来てくれたんです。そのとき、僕はあなたの本を読んだおかげでフランスに行っても結果を出せたと言ったら、「それは嬉しい」と言ってくれました。

 もう一言、「今の日本社会には、ゴーンさんのような経験をした人間がもっと発言してくれないとダメだ。頼むからもっと言ってくれ」と伝えたんです。そうしたら、「お前はいくつなんだ?」と聞かれて「32歳だ」と答えたら、「お前にはあと35年のビジネス労働が待っている。だから、お前が自分で言え」と言われましたよ(笑)。