「クッキー」の情報から
ユーザーの行動を追跡する仕組み

 企業がネット上で顧客(ユーザー)に商品を販売したり、サービスを提供するECビジネスを展開する際に重要なキーワードの1つとなっているのが、DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)だ。DMPの定義には諸説あるが、1つはネット上のユーザーの属性や行動を格納するデータベースを指す。

 ユーザーがWebサイトを見た記録のほとんどは、実はそのユーザー自身が使っているWebブラウザに「クッキー(cookie)」というデータで記録されている。クッキーに記録される情報は、ブラウザ(=ユーザー)の識別コード、訪れたWebサイトのURL、訪れた日時などだ。

 クッキーがあるおかげで、ユーザーは会員制のWebサイトでも一度登録すれば次回からはログイン情報を入力する必要がない。二度目に来た際に、Webサイト側がクッキーの情報からそのブラウザが過去にログインしていることを読み取るからである。もちろん、ユーザーの判断でクッキーを記録させないことも可能だが、その場合は毎回IDとパスワードを入力しなければならず、少々面倒だ。ユーザーから見ると、便利さと引き換えに閲覧情報をWebサイト側に提供していることになる。

 ログインの自動化以外に、Webサイト側はクッキーをどう使うか。たとえばネット通販サイトでは、ログイン中のユーザーに対して、過去に購入した品の関連商品や、閲覧はしたが購入に至らなかった品、あるいは年齢や性別などの会員情報から割り出した品を「おすすめ」として案内する。

 このようなマーケティングを行うには、従来企業が保有していたCRM(顧客関係管理システム)だけでは不可能で、自社サイト内の行動履歴(クッキー情報)を加えたデータベースが必要になる。この拡張された顧客データベースを「プライベートDMP」と呼んでいる。

 プライベートDMPの導入は、ネット事業を手掛ける大手企業を中心に進んでいるという(実際のプライベートDMPには、Webサイトの閲覧情報に加えて小売業ならPOSデータ等、顧客に関するさまざまな情報が格納される)。

 ユーザー自身が会員になっているような常連のサイト内で、おすすめ情報が表示されるのは違和感が少ないし、むしろ便利でもある。しかし最近、まったく別のサイトを訪問しているときにも、過去に訪問したサイトの広告が表示されることがある。どうしてそのようなことができるのか。