替え刃モデルを採用した、
多くの大ヒット商品たち

本体を安く(赤字ででも)売り、その後の消耗品やサービスで長く(大きく)稼ぐこの「替え刃(Razor and blades)モデル」は、のちに多くの商品で採用されることになります。

 ・小型コピー機とトナーカートリッジ(キヤノン)
 ・インク(バブル)ジェットプリンターとインクカートリッジ(HPやキヤノン)
 ・携帯電話・スマートフォンと通話・データ通信料
 ・インスタントカメラと専用フィルム(コダック)
 ・電動歯ブラシと替えヘッド(ブラウン(*4)
 ・家庭用ゲーム機とゲームソフト(任天堂)
 ・コーヒーマシーンとコーヒーポッド(ネスレ)

 もしくは、

 ・エレベーターと点検・保守サービス
 ・自動車と車検や修理・点検サービス(ディーラーにとって)

 なども、(少なくとも昔は)そうだったでしょう。「替え刃モデル」は世界を変えたのです。

 大金持ちになったジレットでしたが、理想郷の建設を目指して挫折し、さらには世界恐慌や、他の役員たちとの権力闘争、特許紛争の荒波の中で資産を失い、1932年、失意の中で他界します。

 しかし会社自体は、その後も技術開発と特許出願を続け、替え刃モデルの成功例であり続けています。替え刃をカートリッジ式にし、刃の数も2枚から3枚となり、ついには5枚プラス裏側にトリマーつきという……。しかしその「フュージョン5+1」はその刃の数を揶揄されながらも、大いに売れ、かつ多くの特許に守られ高収益を謳歌しています。

 いまやジレットは、替え刃モデルの成功例ではなく、知財モデルの成功例としても、語られるべき存在なのです。

 2004年12月期、ジレットの売上は105億ドル、利益率は23.5%に達しました。そのジレットは翌年初、規模5倍のP&Gに買収される道(*5)を選びます。P&Gからすれば、570億ドルの買い物(*6)でしたが、大幅なコスト削減やブランド集約にもつながり、大きなプラスとなりました。

 そしてジレット自身は、競合であるシック(Schick)(*7)や電気シェイバーなどに対抗するための営業力や、投資力を手に入れたのです。

*4 1984年、ジレットが完全子会社化。P&Gのジレット買収に伴って、2005年からはP&Gの子会社に。
*5 主導したのはジレット初の非生え抜き経営者ジェームズ・キルツ。ジレットを再活性化し収益性を高め、P&Gへの売却で巨額の報酬を得た。
*6 同年9月末、米連邦取引委員会(FTC)が承認。ただし、ジレットの防臭剤「ライト・ガード」と、歯の漂白剤「レンブラント」の2つの事業を売却することを求めた。
*7 世界シェアではジレットが7割以上といわれる。日本では高シェアだったがジレットに猛追されている。


参考資料
『インビジブル・エッジ』マーク・ブラキシル、ラルフ・エッカート(早川書房)
RAZOR ARCHIVE
「ロングセラー誕生物語 ジレット/Gillette」P&Gサイト 
「世界のビジネスプロフェッショナルたち 経営者編 キング・キャンプ・ジレット」ダイヤモンドオンライン
『ビジネスモデル全史』三谷宏治(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

お知らせ
経営戦略全史』につづく『ビジネスモデル全史』が、9月18日発売となります。

 9月11日開催の刊行直前セミナー(アカデミーヒルズ、ディスカヴァー・トゥエンティワン 共催)は募集1週間で満席となりました。ありがとうございました。なお、9/12からは以下、全国の主要書店22店で先行発売が行われます。

◆札幌:紀伊國屋書店 札幌本店
◆東京:丸善 丸の内本店、丸善 日本橋店、紀伊國屋書店 新宿本店、紀伊國屋書店 新宿南店、啓文堂書店 渋谷店、三省堂書店 神保町本店、三省堂書店 有楽町店、八重洲ブックセンター、リブロ 池袋本店、ブックファースト 新宿店、ブックファースト 渋谷文化村通り店、有隣堂 ヨドバシAKIBA店、有隣堂 アトレ恵比寿店、TSUTAYA 神谷町駅前店
◆川崎:丸善 ラゾーナ川崎店
◆名古屋:ジュンク堂書店 名古屋店、三省堂書店 名古屋高島屋店
◆大阪:紀伊國屋書店 梅田本店、紀伊國屋書店 グランフロント大阪店、紀伊國屋書店 本町店
◆福岡:ジュンク堂書店 福岡店

 9/5頃から上記店頭で予約も受け付けます。先行発売部数は限られていますので、「一刻も早く手に入れたい」方は上記書店にお急ぎください (^_^)v