前述のように、河合塾はベネッセ同様に高校や大学に出入りすることが多いから、駿台よりはスマートに学校と接することもできる。情報も速やかに入手していることだろう。そもそも大学情報や模擬試験データの扱いに関しては業界随一であり、「情報の河合塾」の定評は揺るがない。

 こうした大学との距離の近さが次の事業展開を考えやすくすると私は考える。河合塾は受験産業としてではなく、教育産業として事業を縮小しながらも生きていくことになるだろう。

 一方、駿台は駿河台大学や駿台専門学校が不良債権化しないか心配である。首都圏でも国道16号の外側にある大学は募集が苦しい。それに駿河台大学はなによりも「私大文系」である。さらに言えば、これから少数の優秀な層を取り合うことになり、医学部受験などは防戦となる。これに耐えられるだけの柔軟な創造力が問われるのではないか。

 今回の代ゼミショックで引き合いにされることが多かった東進であるが、永瀬昭幸代表が機を見るに敏であり決断が早い。小教室展開やフランチャイズ展開がうまく、この教室展開を今後も生かせるかどうかだろう。達成度テスト導入とともに素早い業態転換を図ることは充分に考えられるが、その時に永瀬代表は70歳近い。後継者にスムーズに事業を受け渡せるか、興味深い。

マスとローカルの温度差

 さて、ベネッセであるが、今年、通信添削部門の人員削減をして、介護事業に人員を割いたと聞く。会長兼社長の原田氏は「100円マック」のごとく価格破壊だと言うが、私教育に安かろう悪かろうはあり得ない。そんなものには誰もおカネを払わない。

 達成度テストが議論され始めた当初、導入に積極的な意見を持つ私に、「ベネッセは社を挙げて反対です」と言った社員がいた。今、ベネッセはこの問題をどう捉えているのだろう。もともと守旧的な社員が多く、優等生が多い社内風土である。価格破壊が守旧派を破壊するかもしれないが、それだけではうまくいかない。

 ベネッセが得意とする学力中位層は、果たしてどこまでおカネを払い続けてくれるのか。学力中下位層はなかなか教育におカネを払わない時代が来るのではなかろうか。なぜならば、今はなんでも学校内で済ませようとする傾向がある。いわゆる塾いらずの「面倒見のいい学校」だ。公立も私立も、校内の学習サービスを充実させる方向にあるから、わざわざ学外に教育投資をしようとする家庭は減るだろう。

  既に模擬試験をはじめ学校に様々なサービスを提供しているものの、少子化と達成度テストの影響は大きくなり、果たして成長が見込めるだろうか。

 ベネッセは、誰が提供するサービスにおカネを出してくれるのかを探す、長い旅に出かけたように私からは見える。