新卒採用の話からそれますが、経験者採用の浸透と一般化も、動きに拍車をかけています。PDCAサイクルが短期間で回る経験者採用では、競争力確保のためさまざまな手を打たねばならないからです。

 まさに知恵の絞り合いの世界が展開されつつあります。

2016年採用を直撃する
採用活動時期の後ろ倒し

 新卒採用が変わる機運が出てきた最中、2016年度採用を直撃したのが、例の「採用時期論」です。採用活動の開始を3年生の12月から3月に、3カ月間後ろ倒す、選考開始を4年生の4月から8月まで4カ月後ろ倒す。ただし、内定は従来どおり10月、というのがその概要です。

 現在の就職協定の原型は1928年に大手企業と有名大学の間で締結された「紳士協定」にまで遡るといいます。それから80年以上経て、いまだに「時期論」で採用の本質が変えられるという勘違いが続いている……。

 なんだか少々むなしさを感じます。

 横並びのスケジュールで「異能の人材」が採用できるでしょうか。旧態依然の採用手法で「イノベーティブな人材」が採用できるでしょうか。教室形式の話を聞くだけのセミナーに「自ら発信できる人」を呼び集められるでしょうか。

 インターンシップの動きも気になります。リクナビのデータを見ると、今年の夏のインターンシップ実施企業は倍増しています。これを受けて2016年度採用の長期化、早期化を指摘する声も高まっています。

 倍増しているとはいえ、インターンシップは採用本番と比較するとじつに小さなマーケットに過ぎません。それがゆえに、インターンシップ選考に何社応募をしても、なかなか合格せずに苦しむ学生も出ています。

 そもそも本当の意味で「リアルな仕事の体験」となるインターンシップのカリキュラムを提供できている企業がどれだけあるのか。この点も含めて、ちぐはぐな感じは否めません。

「採用知恵比べ」の
時代が始まる

 2016年度新卒採用は、各社担当者の知恵の絞り合い競争になるでしょう。スケジュールの大幅変更により、前年を踏襲するだけの施策ではお茶を濁せなくなりました。

 これを好機ととらえ、いかに自社の採用をゼロベースで考えられるかが勝負です。

 ナビを活用したマス一辺倒の採用のかわりに増えているのは、多様でマルチなルートによる採用手法をとる企業です。

 この動きはさらに加速するはずです。