ですから、採用の数値目標にはあまり意味がなく、企業活動全体の中で採用や育成をデザインしていく必要があるわけです。これも言うはやすし、行うは難しのところがあります。

 新卒採用に限っていえば、もう1つ大切なポイントがあります。

 何かと言えば――

 学生が社会人になる、というのは、それまでの人生における最大のトランジション(移行期間)にほかなりませんよね。標準で16年間は過ごしてきた「教室パラダイム」から、これから果てしなく続く「社会パラダイム」へと、大きなパラダイム・シフトが強いられるのですから。

 つまり、新卒採用は、その後の内定者フォロー、新入社員研修、初任配属、OJTと連動して、このトランジションを乗り越えさせるプロセスの1つでもあるんです。

新卒採用に
大変革期が到来する

 新卒採用の世界では大きな変革期がついに到来しそうです。
リクナビが「Recruit Book on the Net」として世に出た1996年以来の変化になるかもしれません!

 今回の変化はウェブというツールによる変化ではありません。新卒採用を取り巻く世界の変化に促されてのものです。

 企業の競争力の源泉はずいぶん前から、「効率性の追求」から「創造性の追求」に変わっています。効率性の追求のための武器となった「同質的で均質的な組織集団」が強みを発揮した時代は去り、かわりに異質で多様でありながら、共通の思いでしっかりと束ねられた集団が力を発揮する時代になりました。

 前者の時代には、横並び新卒一括採用はじつにフィット感がありました。そのため、企業の競争力の源泉が変化した現在も、強い慣性の法則が働き続けています。おかげで企業の新卒採用への取り組みはあまり変わっていません。

 これは、冒頭で書いたとおり、採用が経営マターとして位置付けられてこなかったこと、多くの採用担当者も学生同様、大手採用ベンダーの掌の上で仕事をさせられてきたこと、が原因なのでしょう。

 一方、ベンチャー企業を中心に、自分の頭で考え、行動するタイプの新卒採用担当者は増えています。

 こういった企業は、現行のナビ中心のマス採用活動市場ではあまりにも不利なポジションにあるため、自ら知恵を絞るしかないのです。しかも、歴史の浅い企業においては、まさに人がすべて。ですから採用業務を最優先事項に置く経営者も多く存在します。

 この動きは、今や大きなうねりになりつつあります。

 大手企業の採用担当者も彼らの動向を参考にし始めており、利に敏感な採用ベンダーは商品として取り込もうとしています。