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「働き方」という経営問題―The Future of Work―

「顧客に会わない営業」はなぜ生まれたのか?
IT企業があえて挑む“PC強制撤去”の効果

河合起季
【第10回】 2014年9月19日
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 「もちろん、面談をある程度重ねると、持っていくネタもなくなりますよ。でも、何度も会って話しやすくなっているせいか、逆にお客様のほうから話していただけるようになるんですね。内容は、自分が今抱えている仕事の課題や悩みとか。じつは、これが我々にとって一番重要な情報なんです」

 こうして、プッシュ型から提案型の営業スタイルにシフトしていくことができたという。

劇的に向上した営業成績の背景には
トップの強力な後押しがあった

 成功した商談パターンを分析してみると、週1回以上同じ人と会い、取引先の会社の「ホワイトボード」を使って議論していることがわかった。

 「当社の営業担当者がホワイトボードに書きながら話し始めると、そこに取引先のAさん、Bさんが意見を書き加えていきます。そして最終的に、みんなのアイデアの積み重ねが1つの形になって目の前に残る。ここから、ひらめきや解決策のヒントが生まれることがよくあるようです」

 コンサルタントとまではいかないが、営業担当者が課題の整理や解決をサポートするパートナーになっていることは間違いないだろう。

 こうした取り組みの結果、1人あたりの月間面談件数が5~10倍増になり、6ヵ月後には営業の案件在庫が3倍に増えた。

 短期間で大きな成果が現れた背景には、経営トップの明確な方針とリーダーシップがあったことにも触れておきたい。

 たとえば、これまで営業担当者が自分で作成していた取引先に出す提案書は、営業支援部に依頼できるようになった。営業担当者の最も重要な仕事は顧客を訪問することだから、それ以外の仕事については「なくす、短くする、任せる」ことを徹底させたのだ。

 そのため、他の社員に「営業が取引先を訪問するために頼まれた仕事は、拒否してはいけない」という通達まで出している。「IT中毒」から抜け出すためには、全社的な取り組みが必要ということなのだろう。

 現代のビジネスパーソンを密かに侵していくIT中毒。自覚症状がないだけに、その怖さは格別だ。

 本来の仕事力を失った“IT中毒社員”にならないために、まずは、自分自身の仕事ぶりを自己分析してみてはどうか。

 1日に届くゴミメールは全体の何割か、意味のないCCを多用していないか、1日のうちPCを利用している時間は適切か、資料づくりが仕事の目的になっていないか、膨大なデータに振り回されて本質的な分析がおざなりになっていないか――。

 さて、あなたは大丈夫だろうか?

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人口減少による働き手の不足と経済・社会のグローバル化が、企業経営を取りまく大問題となっている。そのなかで、企業が競争優位性を築くためのキーワードとして浮上しているのが「ワークスタイル変革」だ。識者への取材や企業事例の紹介を通じて、すべての企業と働く人に問われている「働き方」の課題を明らかにしていく。

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