写真提供:ジーニアス
首都圏における中学受験塾の王者、SAPIX(サピックス)の凋落がささやかれる今、難関校志向を売りとする「少数精鋭型」の中学受験塾の人気が高まっている。知られざる少数精鋭塾の神髄を各塾のキーパーソンへの忖度なしのインタビューで明らかにする連載『ポストSAPIX 中学受験の少数精鋭塾大解剖』#8では、大規模塾では実施困難な46コースもの「志望校別特訓」、教科別のクラス編成や担任制などを実現する「ジーニアス」の校舎責任者と対談。その前・中・後編のうち後編をお届けする。(教育ジャーナリスト おおたとしまさ)
個別指導塾要らずの
「志望校別特訓」の充実を目指す
おおたとしまさ 今後さらに強化していきたいところはありますか。
溝口恭司・ジーニアス校舎責任者・国語科講師 会社としてはやはり「志望校別特訓」がかなり重要です。今46コースあるんですけど、来年はもうちょっと増やすという話も聞いています。50くらい行くのかな、みたいなニュアンスです。それだけあるということは、超難関校だけじゃないわけですね。
おおた そうそう、それがいいなと思って。
溝口 必ずしも偏差値が高いからその子にとって良い学校だとは本当に思っていません。ジーニアスの進路指導は本当にそういう考え方なんです。私も昔、担任を持ったことがあるんですけれども、そのとき、十分に御三家を狙える学力の子どもが結局違う学校を第1志望にしました。
おおた それは、お子さんもご家庭も立派ですよ。
溝口 ただ、私としてはプレッシャーでした。絶対に落とせない入試になったんですよ(笑)。無事合格しましたから良かったですけど。
おおた 面白い心理ですね!
溝口 私が塾講師として勝手にプレッシャーを感じていただけで、本人にもご家庭にも当然言っていませんよ。そういう場合でも、ほかの個別指導とかを使わないでうちの塾だけで完結できるように、志望校別特訓を充実していきたいとは思っています。
おおた 早稲アカ(早稲田アカデミー)さんの「NN(志望校別コース)」は今何コースあるんですかね。
溝口 あそこは昔より減らしましたよね。
おおた 最難関じゃなくても自分の志望校のコースがあるというのはうれしいじゃないですか。でも一方で、6年生の4月の時点で「本郷か芝か選べない」ということもありますよね。
溝口 そこは担任と相談ですね。途中で変更も可能です。よく「5年生の段階で志望校を決めるんですか」と聞かれるんですが、仮決めでいいから考えてみましょうということです。問題を解いているうちに、その学校のことが好きになるお子さんは結構います。
おおた 今までは、「この学校の問題面白い!」と感じられる問題に特化して勉強する機会は最難関校志望の子にしか与えられてなかった。40コース以上もバリエーションがあれば、いろんな子にその機会が広がります。「最難関以外を志望する子は、勝手に過去問を解いてね」って、ちょっと寂しいですからね。
溝口 過去問は8月中旬くらいから始めます。その過去問も、うちは担任が全員個別にスケジュールを管理します。「何月何日にどこの中学の何年度の第何次試験をやる」というように。
おおた それはありがたい。
溝口 そうしないと、塾の宿題と親がやらせたい過去問の板挟みになって、お子さんが消化不良を起こして伸び悩むんです。ジーニアスでは過去問もこちらから課題として出すので、その板挟みはなくなります。さらに、記述添削は私たちがやっています。授業時間内で賄い切れないぶんはオンラインで添削指導します。
おおた 大手塾では手の回らないようなきめの細かいサービスをされていて、弱点が見当たらないんですけど……。今、どんどん生徒が来て、新規開校していかないと受け入れられない感じですか。
溝口 おかげさまで。でもまあ、1校舎当たりそんなに大きくはないですし、いうて、そんなに知られていないということですかね。それでいうと、経営の課題は、広告にまったくお金をかけていないことかもしれません。大手のようにドカンと広告を出してごそっと集めるというタイプの塾ではないです。







