本来は、各人がその場にいる人たちの印象に残るように、「出身校」の話をしてもいいし、「仕事」の話をしてもいいはずです。でも、最初に「趣味」の話が出たことで、「趣味の話をしたほうがいいんだな」という暗示にかかっているのです。
ということは、自分が知りたいことを聞き出したかったら、自分からそのことについて話せばいいのです。そうすると、「今はこの話題について話をするんだな」という暗示にかかり、自らあなたの知りたい情報を開示してくれるようになるのです。
相手のコンプレックスが知りたければ、自分のコンプレックスを話す。
自分「僕は低身長なのがコンプレックスで、いまだに半年に一度くらい身長を測り続けているんだよね。しかも朝起きてすぐ。夜になると、2センチくらい縮んじゃうからね」
相手「へぇー、そうなんだ。私はいつも二の腕が気になってて……」
クライアント先の経営状態が知りたければ、自社の経営状態について話す。
自社「お陰さまで今年の夏は3年ぶりにボーナスがアップしそうなんですよ。出たら、たまにはご馳走させてください」
クライアント「いいね。うちは駄目だね。社員の数が多いから、なかなか思うようにいっていない。まあ、それでも倒産するほどではないと思うけど」
こうした人間の心理を知らずして、「お仕事は何を?」「ご家族は?」「好きな女優さんは?」と矢継ぎ早に質問したり、「どんな人がタイプ?」「業績はどう?」とストレートに質問したりしてしまうと、「まるで尋問されているみたい……」と相手に警戒心をもたれてしまいます。
先入観を捨てれば、相手の心の中が見えてくる
ラポールを構築するときに障害となるのは、意外にも自分自身の先入観だったりします。「こういう人にはイヤな思いをさせられたことがある」「このタイプの人は、相性が良かったためしがない」など、無意識のうちに潜在意識で人の好き嫌いをジャッジしてしまうことが多いからです。
私自身も、必要以上にプライドが高かったり、人を上から見たりする人が苦手です。そういう人を前にすると「何様?」と、一瞬イラっとしてしまいます。もともと自分に自信がないタイプなので、見下されているように感じてしまうんですね。
普通ならそこで「この人とは話したくない」と距離を置けばすむでしょう。しかし、相手が取引先の人やお客さま、上司や同僚だったりすれば、避けることはできません。また、自分の得意なタイプの人とだけしか付き合えないとなれば、転職や異動で新しい環境に身をおくたびに、人間関係で壁にぶつかることになってしまいます。
そこで、「先入観」の色眼鏡を捨てて、相手の「いいところ」に目を向けるよう、感情を自分でマネジメントしていきます。そうすると、それまではわからなかった、相手の本当の姿が見えてきます。
とはいえ、いきなり苦手な相手の「いいところを探せ」と言われても、難しいでしょう。その場合には、「なぜこの人は、こういう態度を取るのだろう」「なぜこんなことを言うのだろう」と相手のバックボーンに興味、関心をフォーカスしていきましょう。