いわばラスは、「理性の門番」といえます。この門番のGOサインが出た相手とでないと、人はラポールを築こうとはしません。ラスは、人の好悪を瞬時に判断します。「第一印象が大事」といわれるのは、そのためです。
物事の最初の印象が残りやすいことを「初頭効果」というのですが、ラスは瞬間的に潜在意識にしまってある記憶のデータをもとに、「この人は信頼できそう」「この人はウソつきっぽい」と判断を下します。過去の記憶をもとに判断ができあがるので、初対面で良くない印象を与えてしまい、ラスからOKが出なければ、相当、不利な状況からのスタートになります。
もちろん、初対面のマイナスをリカバリーする方法もありますが(詳しくは拙著『心が読めれば人生が変わる!』をご覧ください)、やはり出会ってすぐにラスを開かせ、好印象を勝ち取っておくに越したことはありません。
短時間で信頼を勝ち取るには、自分から自己開示する
では、出会って短時間でラスを開かせ、ラポールを築いていくには、どんな点に注意すればいいでしょうか。それは、相手より先にどんどん自分のことを話し、「自己開示」していくことです。
第○回で、「自分の押し売りをしない」とお話ししたように、自慢話中心の自己開示はマイナスですが、ある程度、あなたについての情報を与えないと、冒頭でお話ししたように、「見知らぬ人」から抜け出せず、いつまでも「ココアを受け取ってもらう」ことができません。
自己開示のポイントは、自分の個人的な情報をありのまま相手に伝えることです。出身地や出身校、家族構成、趣味、キャリア、将来の夢、自分の気持ちなど、プライベートなことをどんどん相手に話します。すると、「初対面なのに、こんなプライベートなことまで話してくれた」という事実が、「この人は信頼できる人だ」という錯覚を生み出します。
自己開示された相手は、「これだけ話してくれたんだから、こちらも何か話さなきゃ悪いな」と感じます(返報性の法則)。その結果、相手も自分のプライベートを明かしてくれるようになり、今度は「自分はこんなに個人的なことを打ち明けているんだから、私はこの人を信頼しているんだ」という気持ちになっていくのです(認知的不協和)。
さらに、「君だけに打ち明けるんだけど」「お客さまだからお話しするんですけど」というようなフレーズを加えるのも効果的です。このように言われて、悪い気がする人はいないでしょう。「そんな大事なことを打ち明けてくれるなんて、自分は信頼されているんだな」と、思ってもらうことができます。
このように人の心理を活用し、「親近感を抱いてもらうこと」「信用してもらうこと」こそが、ラポールを築き、相手を思い通りに動かすための第一歩になります。
相手から聞き出したいことを、まず自己開示する
社内行事や異業種交流会、合コンなど、自己紹介をする場面に遭遇することがあると思います。このとき面白いのは、最初に自己紹介をした人が「○○です。○○が趣味です」といえば、多くの場合、次に続く人たちも自分の趣味を織り込んだ自己紹介をしていくことです。こうした現象が起きるのは、「この場は、趣味について話したほうが無難なんだ」という安全志向が働くからです。