アゴを合わせるだけで、相手がべらべらしゃべり出す。その結果、営業マンなら商品が売れに売れ、接客業ならリピーターが続出するという「アゴの魔法」――。
シンプルだけど驚きの効果を発揮するスキルが満載の『「聞くだけ」会話術』。空調が追いつかないほどヒートアップした「4.25出版記念セミナー」の模様をお届けする潜入レポート、後編です!
いよいよ始まった「アゴ合わせ」と「オウム返し」のワークショップ。その過程でわかったのは、「いかに相手の話を聞けていないか」というコミュニケーションの根幹に関わる大問題だった!?
「自分がいかに相手の話を聞けていないか」
を思い知らせるワーク<1>「3分間の沈黙」
さあ、いよいよ実習だ。
最初のワークは、2人一組で、Aさんは「楽しかったこと」をお題に3分間しゃべる。Bさんは聞き役に徹して、Aさんの話を「ええ」「そうですか」といった、簡単な相槌だけで聞く。
注意点は、質問禁止。しゃべる方はしゃべるだけ、聞く方は聞くだけ――。
説明だけ聞くと、そんなの簡単……と思ってしまうのだが、いざ始めてみると、黙ってただひたすら相手の話を聞くのが想像を絶するほど辛い。まるで何かの修行のよう。
何が一番辛いかというと、質問ができないこと。油断していると、つい質問が口をついて出てしまうのだが、それは相手の話をしっかり聞けていない証拠だというのだ。
なぜなら質問とは「自分が聞きたいこと」で、相手が「しゃべりたいこと」とは別物。だから、質問するという行為は、相手の話を聞くという行為とはイコールではないのだ。
「自分の質問したい内容と相手のしゃべりたい内容が合致していたら問題なさそうに思えますが、それも間違いです。たとえ合致していても、相手がまだ話をしたければ、『話の腰を折られた』という印象を与えてしまいます。ましてや、話の内容と関係ない質問をしてしまったら、信頼関係など築けるわけがないのです」
もし、質問するなら、相手の話をすべて聞き終えてから。ただひたすら聞いて、相手がしゃべりたいことを言い終わった、そのタイミングを見計らわなければならないのだ。
日常生活では、ほとんどの人が、自分が聞きたいタイミングで質問している。それで、会話が成り立っている……ように見えるかもしれない。
しかし、それでは自分が相手の話を聞けていないかもしれない。また、相手も自分の話をきちんと聞いてくれているかどうかもわからない。
コミュニケーションの落とし穴は、こんな簡単な所に潜んでいたのである。