まさに日本とは好対照である。11月5日、ドイツは総額500億ユーロ(約6兆1000億円)規模の追加経済対策を打ち出した。

 メルケル首相は、この対策を「骨太で目標をはっきりさせたもの」であり、「不自然な需要刺激策とは一線を画する」と強調した。

 中身を見ると、中小企業への貸し渋り対策など日本と共通する項目もあるが、投資促進や省エネ・環境問題に関連する施策が目につく。

  たとえば、企業に短期間での減価償却を可能とする税制改正、建物のエネルギー効率向上への支援、新車購入での税免除(環境性能の高い車種はより優遇)などだ。

 このような内容となったのは、「“藁の火のようにパッと火がついて消える”ような短期的な景気刺激策には、産業界が強く抵抗している」(ジェトロ・デュッセルドルフの小谷哲也氏)ことも背景にある。技能の低い労働者の再教育支援も挙げられているが、「これもドイツが長らく抱える課題の一つ」(同氏)だ。

 他方、わが国の追加経済対策は、“目的が不明瞭”“選挙対策のバラマキ”と批判を浴びている。

「“思想”を持った政策であるか否かが、最大の違いだ」。元経済諮問会議員の八代尚宏・国際基督教大学教授は指摘する。「経済対策は“長期的な課題をこの機にやる”ものであるべきだ。各国の経済対策は、国際協調の一方で、いかに自国の成長力を高めるかという政策競争の面もある。日本はそれがまったく見えない」。

 ドイツでも、専門家のなかには「規模が小さ過ぎる」などと今回の対策の効果を疑問視する声は少なくない。だが、国民の支持率は高い。11月7日に発表された世論調査では、68%がその内容に賛意を示している。

 対して日本では、生活支援定額給付金を「評価する」は31%、追加経済対策全体でも同37%(共同通信社の世論調査:11月8~9日)。差を生んだのは、“思想の有無”にほかならない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 河野拓郎 )