ドル円は年内に112円、今後1~2年内に120円に達すると予想する。海外投機筋の円売りは、米国の強い経済指標と金利先高観から燃料補給され続けよう。
日本では、FX(外国為替証拠金取引)市場のドルロング(買い持ち)が相場の上がり売りで劇的に減った。輸入企業は107~109円水準で消失したオプションによるドル買いヘッジ分のドルを買い直す必要がある。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の新たな資産配分の発表を控え、投資家もまたドル買い意向が根強い。海外勢の円ショート(売り持ち)が買い戻されても、日本勢の下値買いで108円台から105円まで下値は強固だろう。
一段の円安は日本経済に悪影響を及ぼすから起こりそうもない、という指摘には賛成しない。経済的に居心地が良い相場水準という論点は、相場予測と異なる代物だ。
為替変動の経済的影響は、ミクロではまちまちであり、マクロでは顕在化に時間がかかる。マクロ的制約がすぐ出ないから、為替はオーバーシュート(行き過ぎ)しがちともいえる。しかも、日本銀行は利上げで対抗するならともかく、2%物価目標が未達である限り超金融緩和を拡充し続ける構えだ。
「強いドル」が相場テーマとして認知され、新興国・資源国の高金利通貨を含め、為替投資にどう取り組めばいいかという問い合わせが多い。昨年は高金利通貨の大半が「脆弱」とされた。高金利通貨は通常、経常赤字を海外からの資金流入で埋め合わせるために高金利なのであり、かつ通貨安によるインフレを抑止すべく高金利なのだ。その経済見通しが弱いと、海外マネーの流入が滞り、経常赤字を賄えず、通貨安となってインフレが高まり、それを抑止しようと利上げすると景気が一層圧迫されるという悪循環だった。