米国の金利動向に鑑み円安が加速
日本にとって必ずしもプラスではない

 足もとの為替市場で、一時1ドル=105円台に乗せるなど円安・ドル高の傾向が鮮明になっている。この背景には、米国景気の回復が明確化し始めていることに伴い、米国のFRB(連邦準備理事会)が金融政策を変更して、金利を引き上げることが現実味を帯びてきたことがある。

 FRBが政策金利を引き上げると、日米の金利差が拡大することになる。金利差が拡大すると、金利の低い通貨から高い通貨へと投資資金が移動することが想定され、ドル高・円安の傾向が強まる可能性が高い。

 金融専門家の間では、年末までには1ドル=108円台まで円安が進む可能性があるとの見方も出ている。円安傾向が鮮明化することは、自動車などわが国の主力輸出企業にとって重要な追い風になるものの、輸入企業にはマイナスの影響を与えることになる。

 そう考えると、円安が一段と進むことが必ずしもわが国経済にプラス効果をもたらすとは限らない。現在、わが国の貿易収支は赤字で、輸入の方が輸出よりも多い。そのため円安がさらに進むと、輸入企業の収益の悪化などを通して、わが国経済にマイナスの影響が及ぶことも考えられる。

 円安が進むと、輸出企業が多い株式市場は活発化することもあり、一般的に円安は、わが国経済にとってプラス要因と見られることが多い。しかし、中長期的に円安傾向が続くと、わが国の経済的な富が目減りするなどの弊害も多いことを理解する必要がある。

 現在のように、世界の主要国の間で自由に貿易が行われ、投資資金の流れにもほとんど制約がない状況になると、二国間の通貨の交換レートである為替が持つ意味は、極めて重要だ。