正しく振り返らせることで
経験は智慧に昇華する

第5ステップ:部下中心に問題を「見える化」し、支援する(困難への対処)

 仕事をしていると、困難な問題にぶつかります。まずは、部下が問題を抱えたときに、相談しやすい雰囲気をつくることが肝要です。そのためには、普段から部下の話に耳を傾け、共感することで「この人は悩みを聴いてくれる」と思わせることがポイントになります。

 その上で、問いかけながら、経過や現状を「見える化」します。その際、事実のみならず、部下の意見や感情も聞き出し、あくまでも部下中心に話を進めなければなりません。

 ヒントを与えながら部下に考えさせることが基本ですが、部下の能力が不足する場合や業務への影響度が大きいときには、状況に応じて、支援方法を変えることも大事です。

第6ステップ:適切な形で褒めて、叱り、振り返らせる(評価)

 節目節目で仕事を評価する際に気をつけなければならないのは、適切な形でフィードバックし、部下に正しく振り返らせることです。具体的には、という形「労をねぎらう」→「聴ききる」→「問いかけて考えさせる」→「アドバイスする」でフィードバックすることが基本です。

 褒める際には、「何が良かったのか」「どこが伸びたのか」を具体的に説明し、才能よりも努力を認めることがポイントになります。また、メールや日報コメントなど言葉に残したり、職場全体で褒めることも有効です。

 叱るときには、客観的事実に基づき理由を明確にし、簡潔に叱りましょう。感情的になっているときは、少し時間を置いて冷静になってから叱り、人格を否定することは避けなければなりません。褒めるにしても、叱るにしても、本人の内省につなげることが大事です。

第7ステップ:ヒントや問いかけで学びを引き出す(学びの抽出)

 振り返りの中で大切なことは、学びを引き出すことです。このとき、自身の失敗体験や成功体験をヒントにしたり、取引先や社内の他部署と対話する機会を提供することが有効です。

 部下のモノの見方の狭さがネックになるときには、取り組みや作業の流れをチャート図やツリー図にして「見える化」したり、時系列で考えさせるという手もあります。

 また、振り返りの結果が一過性で終わらないように行動習慣につながるような形で教訓を引き出すことが大切です。その際、教訓を言語化させることで深い学びにつながります。

まとめ

 今回は、「OJT完全マニュアル」の概要のみを紹介しました。まずは全体像を押さえていただきたかったからです。ただ、ここで示した原則を頭に入れておくだけで、OJTの質はアップするはずです。次回以降は、個別のOJTスキルについて説明いたします。