いまの日中関係は
戦後最悪なのか?

 それでは、いかに関係を改善すべきであろうか。まず、日中両国の双方から日中関係の現状を見てみよう。

 日本側から見れば、今の状態は戦後最悪と言えるかもしれない。戦後の占領期を除けば、日本は中国に対して、外交面で一貫して優位に立っていたからである。それは、周知の通り、中国での内戦の結果、中華民国政府が台湾に移り、中国大陸には中華人民共和国が成立したことに起因する。冷戦構造が強まるなか、米国にとって、日本の戦略的重要性が著しく高まったのである。

 さらに日本は、戦後いち早く復興を遂げた。経済の高度成長を実現し、戦後20年も経たないうちに、経済大国の地位を確立し、ほかのアジアの国々をリードする存在になっていった。

 これに対し、台湾にある中華民国政府(国府)も、大陸にある中華人民共和国政府も、対日外交においてはいずれも低姿勢を貫いた。台湾海峡を挟んでの政治的・軍事的な対峙を背景に、台湾の国府は日本との外交関係の維持に注力し、大陸中国政府は民間交流、経済交流、人的往来など、さまざまな手法を講じて日中友好を提唱し、日本との国交正常化実現に向けてあらゆる方法を尽くしてきたと言える。

 日本から見れば、国府、大陸中国政府がいずれも日本に対して強硬姿勢を示さなかったのは、こうした情勢が影響したためと考えられる。

 一方、中国(大陸)側から見れば、現状はどう評価されるのであろうか。

 1972年の日中国交正常化までは、日本と公式の外交関係はなく、日本国内に正式な外交施設を設置できず、日本との交流を図る際には、米国の封鎖や国府による反発など、常に多くのハードルを乗り越えなければならなかった。しかし、国交正常化によって正式な外交関係を樹立後は、中国は日本側に自らの国益を主張できるようになり、とりわけ1990年代以降、中国が目覚ましい経済発展を遂げるようになると、その姿勢は一段と強まっていった。

 こうした経緯を踏まえれば、中国側にとって、尖閣諸島国有化後の日中関係は、日中国交正常化以降では最悪の状態ではあるものの、戦後国交のなかった時期に比べてはるかに良好と言える。人的往来や経済関係などが途絶せず、今なお活発に行われていることは、その証左となろう。