その上、無視できないのは「太子党」である。太子党とは、共産党の高級幹部の子息のことである。習主席も太子党であり、このように父親の跡を継いで政治家になる者は少なくない。だが、より若い世代になると、政治家になるよりも父親のコネクションを生かして、ビジネスの世界で金儲けをしようとする者が増えている。

 例えば、江沢民元国家主席の息子の1人は、台湾でIT企業を経営している。李鵬元首相の一族は三峡ダムの建設にも深く関与した、中国の電力の利権を支配する財閥を形成している。 鄧小平の一族も不動産業など多角的にビジネスを行っている。そして、朱鎔基元首相の息子の一人は、外資系金融機関の幹部を務めている。

 彼らは、英国やスイスのボーディングスクールや、米国の大学で学んだ経験を持っている(ちなみに、習主席や李克強首相の子息も海外に留学していた)。華人ビジネスマンの子息同様、欧米的でコスモポリタン的な思想を身に着けていると思われる。彼らの動きは読みづらいが、彼らにとって究極的に大事なのは「金儲け」だ。「金儲け」に有利な条件を整えるために政治的に動く可能性はあるだろう。

(3)中国共産党幹部の「噂」:
華人社会は中国共産党の「弱点」を握れるか

 次に指摘するのは、中国共産党の「弱点」である。 中国共産党幹部が、巨額の貯蓄を香港に移転しているという「噂」がある。彼らは、香港にペーパーカンパニーを設立し、資金を管理しているという。さらに、共産党幹部は旧英国植民地だった香港のコネクションを生かして、英領ヴァージン諸島に資金を移して、マネーロンダリングをしているという「噂」もある。もしこれが「事実」ならば、華人社会がその情報を掴むのはさほど難しいことではないだろう。華人社会が共産党幹部のマネーロンダリングの情報を掌握するならば、それを政治的駆け引きに材料として利用することができることになる。

 この連載では、ウクライナ問題に関する西側諸国のロシアへの経済制裁の効果について論じた(第77回を参照のこと)。プーチン大統領や政府高官には、ロンドンに巨額の不正蓄財の巨額の蓄えがあるとの「噂」がある。西側の経済制裁拡大によって、ウクライナへの軍事介入に関与したロシアの指導者にビザ発給停止、資産凍結の適用範囲を拡大すれば、彼らの蓄財の過程が明らかになり、空前の大スキャンダルになる。その大変なリスクが顕在化する前に、プーチン大統領らは「休戦」によって事態の収拾を図ろうした可能性がある。中国共産党も、マネーロンダリングの「噂」が事実ならば、華人社会に対して大変な弱みを握られる可能性がある。そうなれば、政治的に強い姿勢を貫くことは難しくなる。