「NHK式」これをやると、ますます緊張する!
やってはいけないワースト5

●ワースト第5位――まったく緊張しない

 最初に触れたように、緊張感をまったく持たないで話す場に臨むことはおすすめできません。
 こうすると、「なめた態度の失礼な人」という印象が、話の内容よりも如実に伝わります。

「私はまったく緊張しないんですよ」という人は、それを自慢げに言うものです。つまり緊張を悪いもの、ととらえています。

 お伝えしたように、緊張することはいいこと、相手に対するリスペクトです。 また、「緊張してもいいんだ」という思いは、過剰な緊張感を解いてくれます。

 緊張を悪者にせず、真剣に話を聞いてもらうための演出や、話を伝えるためのよきパートナーだと思って、上手につきあっていきましょう。

●ワースト第4位――準備不足

 やはり準備不足は、不安感をあおり、結果として緊張してしまいます。

「徹夜でプレゼン資料をつくっていて、資料はできたが、話す原稿は覚えていない」

「ちょっとひと言挨拶を、と急に振られた」

 そんな状況では、緊張するのは当たり前です。
 ここまで準備をしたから大丈夫、と自分が納得するまで、しっかり準備をして臨みましょう。

 とは言ったものの、「突然話を振られるときは、準備のしようがない」と思うかもしれません。

 そこで活用したいのが、本書の特別付録「『NHK式+心理学』の集大成! これだけ埋めれば簡単&最強1分自己紹介フォーマット」です。

 このシートに書き込むことこそ、「事前準備」です。
 話の原材料をあらかじめつくっておいて、話す長さや場面によって、アレンジしてください。

 先日ある経営者が話してくれました。
 このシートを切り取り、財布に入れていたそうで、ある集まりにいくタクシーの中でシートを考えてから臨んだそうです。

 その集まりでは、案の定、「ちょっとひと言お願いします」と挨拶を求められたそうですが、この自己紹介シートにもとづいて、「PREP・LP法」(拙著参照)で話したところ、いつもと聞き手の目が違った、食いついてきた、というのです。

 この日は4人くらい挨拶をしたそうですが、この社長のスピーチの後の拍手が一番大きかったと、うれしそうに報告してくれました。

 事前の準備は、何も何時間をかける必要はありません。
 この社長のように、出かける車内の数分でも、きちんとした効果的な準備であれば立派な準備です。ぜひこの「1分間自己紹介シート」をこ活用ください。
 そして、やはり「プレゼンの通し稽古が間に合わなかった~」という場合は、フィジカル面から緊張をコントロールして臨みましょう。

 次回、第3位~第1位を紹介します。お楽しみに。

<著者プロフィール>
矢野 香(やの・かおり)
スピーチコンサルタント。信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。
NHKキャスター歴17年。おもにニュース報道番組を担当し、番組視聴率20%超えを記録した実績を持つ。大学院では、心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号取得。
現在は、国立大学の教員としてスピーチ研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職、ビジネスパーソン、学生などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。
相手に与える印象の分析・改善力に定評があり、話し方・表情・動作を総合的に指導。全国から研修・講演依頼があとをたたない。
著書に、ベストセラーとなった『その話し方では軽すぎます!――エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)などがある。
【著者オフィシャルサイト】http://www.authenty.co.jp