Photo by Wakako Otsubo
ついにリクルートホールディングス(以下、リクルート)が東証1部に上場を果たした。今後はM&Aを含めた積極的な海外事業展開を進めるのに加えて、国内市場に参入してくる海外企業との競争に勝ち抜くため、国内事業の基盤強化とグローバル化を積極的にすすめる模様だ。上場が大きな転機となるのは、間違いないだろう。
その一方でリクルートは、長年多くの人々から「得体の知れない企業」と言われてきた。どうして高い収益を維持できるのか、どのように事業展開してきたのか。意外と社外からそれを理解するのは難しい。製造業ではなく、商社でもなく、はたまたマスコミでもない。同業他社を特定するのも難しい。周囲からみれば、理解できないことがたくさんあるようだ。
そんな得体の知れないリクルートについて、過去から続く強いビジネスモデルの正体と未来に向けてどんな可能性を秘めているのかを探ってみたい。
創業者・江副浩正氏が残した
企業課金型マッチングビジネスという遺産
当方はリクルートに18年間勤務。若い頃に営業部長や編集長、新規事業の立ち上げ責任者を経験した。特に、ベンチャービジネスを支援する事業部門時代に関わった経営者とは、現在も親交が続いている。現在の仕事をはじめる貴重なきっかけとなった。
入社時の配属先は、情報ネットワーク部門の営業現場。もはや外部に売却してしまったのだが、NTTの電話回線を販売する事業だった。すでに、現在のリクルートには当時のことを思い出せるようなビジネスは1つも残っていない。ちなみに入社時(1987年)のトップは、江副浩正氏(創業オーナー)。創業期のビジネスモデルを超える事業をつくるため、多角化の真っ最中で、不動産、金融、そして情報通信と事業の幅を広げていた。
ただ、この挑戦は頓挫する。リクルート事件や不動産不況で借入金の返済が困難になり、ダイエーの傘下で再建することとなったからだ。ちなみに江副氏が生み出した創業期のビジネスモデルは、リーマンショックや震災が起きても堅実に利益を生み出した。この利益が借入金の返済に貢献したのは言うまでもない。では、江副氏が残したビジネスモデルとは何か?それは「企業課金型BtoCマッチング」である。同社のサイトにも、
<当社の提供価値はプロダクトやサービスの送り手である企業(クライアント)と、受け手である生活者(カスタマー)の間に立ち、さまざまな自社サービスを通して両者を結びつけること>
と謳われている。「結びつける=マッチング」に対するフィー(費用)は誰が支払うのか?それをリクルートは、「企業」に定めた。求人情報サイトの「リクナビ」であれば人材を採用したい企業から、不動産ポータルサイトの「suumo」であればマンションメーカーや不動産仲介会社から広告掲載・送客手数料を得るモデルなのである。一方でDeNA社などのゲームアプリ企業や楽天のようなEC系企業は、「生活者課金型」を取っている。収益構造が全く違うのである(楽天が出店者から出店料を得ている点は、リクルートに似ているとも言える)。