――真山さんが新聞記者として勤めた期間は？
真山 2年半ですね。
――その2年半が、作家としての根本になっているところがありますか。
真山 それはあるとは思いますけど、もともとあまのじゃくで、小学生のころから、なんかちょっと人と見る目が違ってたと思いますね。
記者生活は2年半と短かったですけど、記者ってこういうものだよな、という手応えはありました。本当はもう少し勤めたかったですが、入社2ヵ月の新人をひとり通信部に出して、警察もカバーしろなんて人事配置はちょっとひどすぎた。嫌な仕事ばかり回されて、見出しありきの原稿を書かねばならなかったのも苦しかった。修業だから我慢しろ、と言われましたが、自分で自分を説得するのがしんどくなっていきました。
共同通信にいた斎藤茂男さんのようなルポが書きたかったんですよ。『雨に泣いてる』は、ある意味でそのオマージュですね。小説でどこまでノンフィクションのようなルポを書けるかという挑戦です。（10/23公開の次回へ続く）
新刊のご案内
『売国』 10月30日刊行！
文藝春秋、1750円税別宇宙開発に挑む若き女性研究者・八反田遙は、幼い頃から宇宙を夢見、日本の宇宙開発を担う研究者になるべく日々奮闘中。航空宇宙科学研究センター（宇宙セン）の指導教官・寺島に導かれ希望に満ちた日々のなかで、我が国の宇宙開発の現状と問題点を目の当たりにする。それは宇宙開発の世界が生き馬の目を抜く世界であることを知り、同盟国・アメリカとの関係の複雑さに触れることでもあった。 一方、気鋭の検察官・冨永真一は、ある事件をきっかけに功績を認められ、特捜部に配属される。粘り強く次々に成果を出す冨永だったが、大学時代の親友の失踪を機に、奇妙な疑獄事件に巻き込まれてしまう。そしてその陰謀には、戦後の日本復興を支えた大物政治家の影があった。知らず知らず冨永は、宇宙開発を巡る戦後政治の闇に迫ることになる。
『ダブルギアリング 連鎖破綻』 12月25日刊行！
真山仁・香住究著、角川文庫、760円税別
『ハゲタカ』刊行の前年に共著で出された幻の処女作、待望の文庫化！
大手生命保険・清和生命は、破綻の危機に瀕していた。顧客からの容赦ない解約の嵐、統合先には土壇場で白紙撤回されたうえ、暗躍する外資系投資銀行はシビアな現実を突きつけてきた。八方ふさがりの状況のなか、業界の暗部を歩んできた社長室長の各務と、彼の同期で関西に左遷された中根は、生き残りをかけて奔走する。リアルで緊迫感に満ちており、後の真山作品の原点ともいえる傑作。
