終わらない
フラジャイル・ワールド
今日の世界経済や資本市場は、いくつもの時限爆弾が埋まっている「フラジャイル・ワールド」と形容できます。冒頭でも触れたとおり、2008年以降は、各国中央銀行による強力な金融緩和政策が、さまざまなリスクを封じ込めてきましたが、アメリカをはじめ金融政策の正常化という「出口戦略」の方向性が明確になった以上、これまでの「中央銀行が何とかしてくれる」という甘い期待感は捨てなければならなくなるでしょう。
そして、世界各地で観測されはじめた地政学リスクは、ウクライナ問題に代表されるように、単発型の政治・軍事現象というよりも、日米欧の市場主義経済と、ロシアや中国などの国家資本経済との対立という新たな構造対立に姿を変えはじめた印象を受けます。
つまり、現在の私たちは、超金融緩和時代の終焉とポスト冷戦時代の終焉という2つの巨流が、一気に交差する局面に立たされているのです。そうした中で、将来には、今までにはなかったパターンの危機が起きる可能性が高まっています。その際、すでに巨額の公的債務を抱えた政府や、大量の国債を購入してしまった中央銀行を頼みにできるかどうか疑問です。
ただし、資本主義をベースとする市場経済は、過去たびたびの危機に直面してはその都度厳しい状況を乗り越えてきました。未来の危機も完全に防ぐことはおそらくできないでしょうが、必ず解決の道があることも、金融史が教えるところです。悲観でも楽観でもなく、経済や金融の現実をしっかりと見据える目を養うことが、健全な成長を生み出す原動力だといえるのではないでしょうか。
次回から、具体的な事件について、先に挙げた12のケースのいくつかをご紹介していきます。