執着が成果を生むとき、
離れることが成果を生むとき
企業の活動を見ていると、一種サイクルのようなものがあり、執着が成果を生む時期と、離れることが成果を生む時期があることがわかります。
製品の技術開発のように、なんらかのブレイクスルーを生み出すときには執着が必要であり、製品カテゴリー自体が衰退する、多数の消費者の関心が別のところへ移動するときなどは、既存の製品から上手く離れることが成果を生み出すからです。
これは資源採掘に似ています。最初に鉱脈や油田を見つけるため試行錯誤をして「出るまで掘りつづける」ことが必要になりますが、運よく資源を掘り当てたあとは「この場所の下を掘ると、利益が出る」状態が一定期間は続きます。
しかし、あらゆる鉱脈には限度がありますから、あらかた掘り尽くしてしまうとより深い場所を掘らなければならず、やがて採掘のコストはリターンを超えてしまうのです。
【企業が繰り返すサイクル】
(1) 探索
(2) 発見
(3) 継続
(4) 離脱 → 再び(1)へ
これは振り返るとあらゆるビジネスでごく当然に行われていることですが、それぞれに期間の長短が異なること、大抵の場合(3)の継続を一番長く経験することで、(4)の離脱に慣れることが難しく、どこかでつまずいてしまうことになるのです。
サイクルを健全に回すには、どこかで社内の混乱と正しく直面しなければなりません。アルフレッド・デュポン・チャンドラーの世界的名著『組織は戦略に従う』では、全米の農村向けにカタログ販売で成功していたシアーズが、1960年代までのモータリゼーションによって、町はずれの郊外に広い駐車場を完備した店舗を展開して成功したことが述べられていますが。この直営店事業を担当したロバート・ウッドは「教科書にのっていそうな失敗はすべて経験した」と述べています。過去、シアーズの組織はすべて、カタログ販売のために構築されていたからです。新たな目標は古い組織に大混乱をもたらしたのです。
しかし、正しい変化を導いたこの直営店事業は急速に伸び、シアーズの社内に大きな混乱を生み出しながらも同社を新たな成功に導いていきました。