経済成長ができれば、さらに保健と教育に投資ができ、その国の保健制度は充実し、さらなる経済成長を生むということです。

 しかし、現実を見ると、グローバルファンドが活動をしている国では、経済成長は鈍化しています。たとえば、ナイジェリア1ヵ国だけでも推定でGDPの40~50億ドルが失われています。なぜなら、マラリアの流行期には、皆病気になってしまうからです。

 中には、高成長を維持している国もありますが、感染症がなければもっと早いペースで成長する可能性もあります。つまり、これらの国々は三大感染症がなければ、他の分野にお金を回せるということです。南アフリカについて言えば、年間20億ドルものお金をHIV/エイズ対策で使わなければならないという現実があります。

 経済成長と教育、保健制度などのすべてがつながっているのです。

――グローバルファンドへの出資はパブリックセクターとプライベートセクターに大別され、日本政府は第5位の出資国です。プライベートセクターを見ると、武田薬品工業が出資社に名を連ねています。日本の企業経営者や一般のビジネスマンが能動的に、グローバルファンドの活動に関わろうとした場合、何ができるのでしょうか。

保健システム強化はエボラ対策においても重要 <br />三大感染症の撲滅は道半ば、危機は続いている<br />——マーク・R・ダイブル グローバルファンド事務局長Photo by K.S.

 いろいろな形があると思う。武田薬品工業は直接に金銭面でのサポートをしてくれています。それだけではくて、住友化学もマラリア対策における重要なサプライヤーです。

 イノベーションは、民間企業が得意なところではないでしょうか。グローバルファンドではプライベートセクターとのパートナーシップを深めるために、「イノベーションハブ」というものをやっています。

 三つの目的がありまして、まずひとつはリスク管理です。どのようなリスクがあり、それをどうヘッジしていくか。これは民間企業が長けている部分ではないでしょうか。また二つめはサプライチェーンです。三大感染症対策のためのさまざまな物資が、きちんとタイムリーに届くのか。三番目に質の保証です。高い品質を保っていくためにはモニタリングとフィードバックを続けていく必要があります。これは企業がもっとも得意な部分でしょう。

 また、別の方法もあります。ビジネス界で成功された方が、提唱者として保健が国の安定や成長、人々の幸せに大事であるということを積極的に発信していってほしいのです。代表的なのは、ビル・ゲイツ氏でしょう。ゲイツ氏は前回の増資の際に、5億ドルを拠出しました。

 最近ではインドネシアの富豪の、ドクター・タヒーヤが5000万ドルの信託基金を立ち上げました。これはグローバルファンドが仲介し、立ち上げのサポートをしたのですが、この基金に他の富豪やゲイツ氏も出資をし、合計2億ドルの基金になりました。

 パブリックセクターだけでは足りない資金を、プライベートセクターが補完しているという構図があります。ゲイツ氏は同様の仕組みをベトナムやインドなどで立ち上げようとしています。