スーパー、レストラン、美容院は当たり前
オランダにある「認知症の街」

広々して明るい玄関ホール。右側に食品スーパー、左側にレストランがある

 学ぶべき代表的なケアの現場がオランダにある。

 アムステルダムの南東に車で20分、ヴィースプ(Weesp)市の施設「ホグウェイ(De Hogeweyk)」。経営はヴィヴィウム・ケアグループ(Vivium Zorggroep)である。

 2012年の春から夏にかけて、英国の「ガーディアン」をはじめドイツの「シュピーゲル」、米国の「ニューヨーク・タイムズ」、豪州の「ジ・オーストラリアン」など世界の主要新聞やネットに「認知症の街」として相次いで掲載され、一躍国際的に著名になった。

 塀で囲まれた施設の入り口は、遊園地やディズニーランドのような堅牢な構造だ。入るとすぐの広場には噴水やベンチ。噴水の先に延びた大通りに、入居者を乗せた車いすを押す家族の姿が目に入る。両サイドは普通の街の家並みのようだが、ギターのある音楽室、工具が見えるDIY室などである。調理器具が揃ったキッチン室も。入居者のためのクラブ活動の部屋だという。

 絵画やパン焼き、園芸、サイクリングなどクラブもあり、全部で25種類もあるという。

加工食品だけでなく果物も並ぶ食品スーパー

 屋根だけの開放的な玄関ホールの左右には、日用品のスーパーと洒落たレストラン、美容院が店舗を構える。ショッピングセンターに来たみたいだ。日用品を揃えたスーパーで入居者がワインを手に取る隣には、高級紙おむつ「テーナ」の緑色のパックが棚いっぱいに積まれており、要介護高齢者の存在が窺える。財布を忘れても、店員は施設職員なのできちんとフォローする。

 これら店舗と連なる3ブロック、16棟には152人の認知症高齢者が住む。うち8棟は2階建て。いずれも煉瓦風の落ち着いた雰囲気の外観だ。制度上はナーシングホーム(特養)である。

 オランダの施設は、1400の軽度者向けのケアホームと330の中重度者対応のナーシングホームがある。それぞれ、6万5000人と10万人が入居している。ナーシングホームと日本の特養の高齢者に対する入居者の比率を見ると、日本が1.8%で、オランダは2.1%。日本の施設不足が明らかだ。

 建物と建物の間の中庭には草花が咲き、池もある。できるだけ自然の生態を取り込もうと言う意欲がみられる。

 1、2階の居室がユニットごとに続く。一つのユニットは、6~7人。個室と共用の居間やキッチン、水回りで構成される。日本の認知症対応グループホームと変わらない。ただ共用の居間やキッチンスペースが相当に広く、深々としたゆったり目の椅子がさして大きく感じられない。

 庭や池などを数ユニットの連棟式住宅が取り囲み、大きなパラソルの下で木の椅子でくつろぐ入居者の姿があちこちに見られる。