これらは中国がこの地域を取り仕切りたいという願望を持つことを示唆しているし、米国主導の安全保障体制や国際金融機関に対抗し得る構想である。他方、インフラ構築など需要が膨大にあり、他国が反対することが難しい構想という意味で、よく練られた戦略であったと思う。

中国が日中首脳会談に踏み切った理由
国際会議の場を使った交流としての色彩

 日中首脳会談実現の背景にあったのも、APEC首脳会議成功への中国の強い思い入れである。日中関係の摩擦をAPECに持ち込み、それがAPECの意味合いを大きく損ねることを恐れた、ということなのだろう。

 中国は、これまで首脳会談開催の前提条件として2つの条件、つまり首相が靖国神社に参拝しないことを確約する、そして尖閣諸島について領土問題の存在を認めること、を掲げてきた。しかし、結果的にはこれが満たされない形での首脳会談の開催になった。

 日中首脳会談開催前に発表された4項目の合意では、歴史問題では若干の認識の一致があるという点を述べ、尖閣については見解が異なる、ということを述べている。しかしこれは、ほとんど合意がないということを発表しているに等しい。

 すなわち、日本にしてみれば中国が求めた2つの条件について合意をしているわけではないと言い得るし、中国にしてみれば今後の状況いかんによって、従来の対日批判を繰り返す立場を留保していると見ることもできる。

 さらに中国は、日中首脳会談開催が国内に跳ね返ることを恐れ、会議の形式について他の首脳会談と明らかな差別化を図った。新華社などの報道では、他の諸国とは首脳会談が開催されたことを伝えているが、日中首脳会談についてのみ、APEC首脳会議のために中国を訪れた安倍首相の要請を受け入れたと報道している。