状況4
適切なストレッチ目標を設定したが
トレーニーがつらそうだ
対処法4
ストレッチ目標への挑戦を
「ストイックな修行」ではなく
「エンジョイメント」させる
ストレッチの度合いが本人の現有能力の1.2~1.3倍に設定されていて、かつ納得が得られているとして、それでも「つらい」と感じる場合は、どうすればいいでしょうか。
この場合は、対処法3の最後で述べたように、「エンジョイメント」で動機づけることが重要です。
エンジョイメントとは、仕事自体に関心を持ち、やりがいや面白さを感じることで意欲が高まっている状態、および仕事をやり遂げることで達成感や成長感を自覚している状態を指します。
「エンジョイメント」で動機づける方策には、次のようなものが挙げられます。
(1)トレーニーの価値観・意見を反映させた目標設定とする
(例)
日頃のコミュニケーションでトレーニーの価値観・物の考え方を把握したり、面談で本人がやりたいことを傾聴し、それらを反映した目標を設定する。それにより、「上が決めた目標」ではなく「自分で決めた目標」とする。
(2)ストレッチ目標への挑戦の意味合いを伝え、本人に考えさせる
(例)
ストレッチ目標への挑戦が、「MVP(使命・価値・誇り)」(第2回参照)の実現につながることを伝え、「組織の一員として自分も貢献したい」というトレーニーの自負心を高める。
(3)ストレッチの中に本人が創意工夫できる余地(任せる部分)を組み込む
(例)
目標の中に「任せる」部分を組み込み、「自分の考えで創意工夫しながら成果を出す」ことの醍醐味を伝える。トレーナー自身のそうした成功体験を語ることも効果的である。
今回は、中長期のバランスを考えて、トレーニーにとって腹落ちする「目標設定」のあり方について考えました。目標設定という仕事の初期段階において、労を惜しまずに丁寧に部下とコミュニケーションすることが、その後の指導に良い影響を与えるといえるでしょう。