ナス あれえ? そんなふうに引っかかる箇所なんてありましたっけなあ?

セロリ いや、本筋には関係ないんだけどさ。青年が自分の境遇を『へちま』にたとえる場面があるじゃん? 具体的には94ページからはじまるところ。

ナス ああ、そういえばありましたな。日陰で育ったへちまは、日差しを浴びて育ったひまわりのようにはなれないと、青年が悲観して語る場面ですな。

セロリ なんかさ……。暗にへちまのことをバカにしてない……?

ナス う……。まあ、そんなふうに感じ取れなくもないですなあ……。

セロリ ひまわりがよくてへちまがダメとか、そんなことねえからっ! へちまはたわしや美容液で大活躍だろ? そこはむしろ、へちまでいいじゃんって思うところだろ。

ナス それはほら、青年が主観的な価値基準でへちまが劣ると考えているだけでしょう。実際はへちまとひまわりは立場は違えどその価値に違いはありませんぞ。

セロリ だよなあ。俺からしたらへちまで羨ましいよ。美容効果で女子にモテモテだぜ?

ナス へちまなら女子にモテる……。それは一風変わった価値観ですな……。

セロリ あとこの青年、知り合いの誰かに似てるんだよ。なんとなく既視感があるっていうか。

ナス それは私も感じましたな。BARによく来る嫌われ野菜の誰かに似ている気がします。卑屈で思い込みが激しくて、情緒が不安定な野菜……。

パセリ はあ……。みんなが私を嫌ってるの……。どうせ私は添えもののパセリよ……。

セロリ ああ、そうか……。誰かに似てると思ったら……。

ナス パセリくんの言動は、この本に出てくる青年とそっくりですな……。

パセリ ちょっとあんたたち! なんでこっち見るの! 私をバカにして笑ってるんでしょ!

セロリ そうじゃねえから落ち着けって! ……いいかパセリ。お前に必要なのは『勇気』だ。

パセリ え……? ほんとに何なの、急に……?

ナス セロリくんがさっそく受け売りで語ってますな……。とはいえ、この『嫌われる勇気』を読めば、パセリくんもきっと自分を変える勇気を持つことができるでしょう。読者の皆さまで興味のある方はぜび、ご一読あれ。