付け焼刃の勧誘策ではうまく行かない
移住者誘致の先駆け、伊達市の取り組み

 ところで、移住者誘致がブームになるずっと以前から、地道にコツコツと取り組んでいる自治体がある。北海道伊達市だ。

 行政がまちづくりの一環として「人の誘致」を掲げ、さまざまな施策を積み上げている。取り組みが始まったのは、今から15年も前の1999年のこと。そうした発想は当時まだ珍しかったため、一風変わった奇策のように思われた。他所の自治体関係者のなかには「高齢者を受け入れたら、将来、財政負担が増えることになるのでは」と、否定的に捉える人もいた。

 北海道の南西部にある伊達市は人口3万5888人で、高齢化率は32・76%(いずれも2014年10月末現在)。内浦湾に面する伊達市は雪や雨が少なく、北海道でも温暖な地域である。夏には海水浴客で賑わい、「北の湘南」とまで呼ばれている。海と山に囲まれ、そのうえ河川も多く、恵まれた環境にある。こうした気候や自然、地勢の良さに魅かれてか、他所から移り住む人が多かった。

 そんな伊達市が1999年から移住者誘致に本格的に乗り出した。その年の市長選で初当選した菊谷秀吉市長が定年退職者などの移住が多いことに着目し、まちづくり政策の一環として掲げたのである。菊谷市長は2002年に「伊達ウェルシーランド構想」というものを打ち出した。 この構想は、高齢者が安心・安全に暮らせるまちづくりを進めるとともに、新たな生活産業を創り出して雇用の場を確保することで、働く女性や若者の流入を進めようというものだった。

 その具体策の1つが「安心ハウス」だった。伊達市が独自に設定した整備や管理の基準に合致した高齢者向け民間マンションを「安心ハウス」として認定するもので、良質な高齢者向け住宅を民間活力によって普及促進させることを狙った。入居者を原則60歳以上とし、24時間の緊急通報体制を整え、食事サービスがあることなどが認定条件となっている。現在、安心ハウスの認定を受けている民間マンションは2棟で、いずれも伊達市の街中に建っている。