急浮上した地方創生は空念仏か?
トランジション・シンポジウムで考えた

 夏頃から国政の主要テーマに「地方創生」が急浮上した。疲弊した地方の活性化を目指すものだが、具体策に乏しく目新しさも感じられない。てっきり来年の統一地方選を意識しての空念仏かと思っていたら、なんと解散・総選挙である。日本社会は一斉に師走選挙に向けて走り出している。

 そんな状況下の11月16日、都内で開催されたあるシンポジウムを取材した。NPO法人トランジション・ジャパンが主催した「トランジション・シンポジウム」で、会場となった明治学院大学に足を運んでみた。アートホ―ルには120人ほどの老若男女が集まっていた。トランジションとは、「移行」や「移り変わり」「移行期」といった意味である。

 イギリスのトットネスという小さな町で2005年、「大量の化石燃料に依存しきった脆弱な社会」から「地域をべースにした、様々な変化にしなやかに対応できる社会」への移行を目指す運動が産声を上げた。住民の創意工夫と地域資源の活用により持続可能な地域社会をつくろうというもので、地域に根差した活動はトランジション運動と名付けられた。

 イギリスのトットネスで生まれた草の根運動は、瞬く間に欧州各国や北南米、オセアニアなど世界中に広がっていった。日本にも2008年に第一号が誕生し、現在、藤野や小金井、葉山、上田など47地域に増えている。太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーによる自給や有機・自然農法による農作物の地産地消、地域通貨やカーシェアリング、森の再生など様々な活動を展開している。

 こうしたトランジション運動のキーワードは、「ひと」「地域」「つながり」「循環」「自給」「共存」「多様」「楽しむ」といったところだろうか。根底にあるのは、地域で消費する食料やエネルギーの自給率を少しでも上げていくべきだという考え方である。