でも、法律ができたからといって、会社は具体的に何をしたらいいのかわかりません。多くの経営者は、それまで従業員のココロのことなどほとんど考えたことがなかったでしょうし、従業員の健康管理といえば、社内に産業医を置いておくのがせいぜいだったからです。

 また、本来、産業医もある程度の規模になれば置くことは法律で定められているのですが、常駐していないために「ウチの会社にはいない」と思っている従業員も少なくないのです。

ココロを癒すための4つのケア

 働く人のための法律を改正したにもかかわらず、働く人へのケアは特にされないまま。その様子を見て、国はさらに労働者のココロのケアに乗り出します。

 その姿勢のあらわれが、2000年8月に、厚生労働省から出された「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」というものです。

 そこでは、働く人のストレスや自殺が増えたこと、仕事が原因でココロの病になった人を労働災害と認めること(認定は前年)、また精神障害や自殺の労災補償などについて触れられています。ココロのトラブルを抱えた人はもちろん、すべての働く人に対して、ココロの健康対策を立てるよう会社側に求めたのです。

 そして、そのための具体的な方法として、「4つのケア」が必要であることを示しました。

 これに沿ってようやく企業も従業員のメンタルヘルスケアに乗り出しました。企業として従業員のココロのケアをすることで、一人ひとりの生産性を高めようという意識が生まれたのです。この指針は、私たちココロの専門家から見てもとても素晴らしいものです。私も、企業を対象にしたココロのケアでは、この指針に沿ってサービスを行なうことにしています。

 ただし、まだ多くの企業では、そうした指針があることは一応知っていても、詳しい中身は知らないのが現状です。国はせっかくいいものをつくったのに、それを企業に向けて、わかりやすく説明する人やシステムがないために、働く人にまで行き届かないのです。それではあまりにももったいないですよね。

 次回は「4つのケア」について具体的に説明します。