12月14日に投開票される今回の衆議院総選挙は、安倍首相自ら名付けて「アベノミクス解散」。安倍政権の経済政策であるアベノミクスをこのまま継続していいかどうかを問う選挙というわけだ。

 そこでDOLでは「シリーズ・日本のアジェンダ」で、アベノミクスをはじめ安倍政権が進めてきた社会保障、格差問題、エネルギー政策、女性活躍、外交について、その成果を検証する。1回目は直感的に分かる「アベノミクスの通信簿」をお送りする。

物価上昇、名目GDPは上向きだが
消費増税の影響判断にミス

 まずは、復習。アベノミクスとは「第1の矢」である大胆な金融緩和と、「第2の矢」である機動的な財政政策、「第3の矢」である民間投資を喚起する成長戦略、という3本の矢から成り立っている。

 大胆な金融緩和は、この15年間近く続いてきたデフレマインドをインフレマインドに転換させることが最大の狙いだ。人々のマインドが「物価が上がるぞ」というインフレ期待(予想)に転ずれば、消費や企業の設備投資が活発になり、企業収益が増えて賃金も上がり、さらに消費や投資が活発になる。この好循環に入るまで、当面の需要不足を補うのが財政出動で、好循環を長期的な安定成長につなげていく役割を担うのが、国内に新しいビジネスチャンスを提供する成長戦略だ。ここでは第1の矢と第2の矢を軸に評価する

 では、総合成績としてのGDP(国内総総生産、図表1は暦年ベース)から見てみよう。安倍政権が掲げる目標は名目GDP成長率3%程度、実質GDP成長率2%程度である。

「名目」はその時の金額ベースで測った数字、「実質」は物価変動の影響を取り除いた数字のこと。例えば、ある年に日本国が1年に1台自動車を生産し、価格が100万円だったとすると、名目、実質GDPとも100万円となる。翌年も生産は同じく1台だが、価格が110万円に上がったとすると、名目GDPは110万円で成長率は10%となるが、物価上昇の影響を除くと生産台数は1台で変わらないので、実質GDPは0%成長で、実際は豊かになってはいないということになる。